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2004年06月11日(金)  君と旅立とう
夏が近づいてくると、「Time To Say Goodbye」と聴きたくなる。
もちろん、アンドレア・ボッチェリとサラ・ブライトマンのデュエットで。
この曲を聴きながら何かをしようとすると、途端に何も手につかなくなる。ただ音楽に耳を傾けて、窓を開け放って外の空気を部屋に通したくなる。もし、私に車があったら、私はずっとこの曲を聴きながら夜の高速道路を駆りたくなる気分だ。
この曲がつくられた背景を知りたくなる。経緯を知りたくなる。つくった彼らの気持ちや歌う彼らの気持ちを知りたくなる。もし、それがオペラ界をポップス化しようと睨んだ意図があったとしても、古いオペラフリークがサラ・ブライトマンの歌声やキャリアに眉を潜めていたとしても、私は純粋に美しい歌だと思うし、素晴らしい曲だと思う。
良くて新しいものは叩かれるものなのだから。

私の願いを恋人は叶える。
外は冷たくても、シャワーを浴びた後であっても、明日は仕事であっても、私たちは車に乗り込み、私の気の済むまで彼は車を走らせた。私はそんな彼に一生懸命この曲を解説する。

元々は「I will go with you」という曲名だったのだけれど、はじめてサラとアンドレアが共演したときボクサーの引退試合の前説で歌ったのがこの曲で、だから曲名が「Time To Say Goodbye」に変わったんだよ、とか、「I will go with you」はイタリア語だけど、「Time To Say Goodbye」はTime To Say Goodbyeの部分だけが英語で、あとはイタリア語なんだよとか、アンドレアは小さいときにサッカーをしていて怪我してしまって以来、目が見えないんだって、でも三大テノールと競演するくらい実力のある人なんだよ、とか、サラはもともとはミュージカル出身の人なんだよとか。

好きな曲は、好きな人に知ってもらいたいから。好きな曲を聴く時間を好きな人と共有したいから。彼も、一生懸命私の話しに耳を傾けては、車の中に流れる「Time To Say Goodbye」に耳を傾ける。彼も一生懸命、私の好きなものを知ろうとしている。
私たちは、奇妙な夜のドライブで、何回も何回もその曲を聴いてはため息をついた。
我侭な恋人の我侭な願いを、彼は叶えた。


そんな彼が愛しくも思えて、この人を好きになってよかったと思えた。
私は、アンドレア・ボッチェリになってみようと、静かにうねる車の中で音楽に耳を傾けながら、目の見えない世界を想像しようと瞼を閉じてみた。
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