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| 2004年05月20日(木) 大人と子供 |
| 商談を終えてビルを出たら、雨が本降りになっていた。 気持ちよいほど、ざあざあと音を立てて雨は降る。営業中に傘を持って出るときは、なるべくビニール傘にするようにしている。だって、電車の中や客先に置き忘れることが多いから。私がずっと大切に使っている傘は、とっても大事な人に買ってもらったもの。失くしたくないから営業中は持たないようにしていた。でも、今日は何となくお気に入りの傘を差して出かけたくなった。 傘を差して歩きたくなるほど、気持ちよい雨が降っていた。 空は灰色で、風がとても冷たい。もうすぐ6月になるというのに肌寒い。 また今年もうんざりするような梅雨が始まるんだろう。 オフィス街に林立するビルのあいだに小さな公園がある。 天気の良い日は、サラリーマンがスーツを脱いで日陰で休み、昼休みにはOLがサンドイッチを広げて昼食をとる。けれど、雨の昼下がりには誰も誰もいない筈だった。 高校生の女の子がひとり。ぽつりとベンチに腰掛けている。 半そでのシャツは雨で透けてしまい、スカートのひだはすっかり濡れて皺になっている。色の抜けた髪の毛はべっとりと頬に張り付いていた。彼女は俯いてずっと自分の靴先を見つめていた。 雨の降る中、傘もささずにずっと俯いたままの高校生。 女の子の横顔からは表情を窺えなかったけれど、泣いているようにも見えた。髪の毛の一本一本から涙が滴り落ちて頬を伝う様子が、遠くからでも泣いている様を想像させた。自分が高校生の頃、泣いてしまうほど悲しい出来事があったとしたらそれは一体どんなものだったろうと思い出そうとした。 高校生の時期は、子供と大人の顔を使い分けることを望まれる時期なのかもしれない。背伸びして大人の真似をすればまだ未成年だからと叱られたり、子供のように甘えようとすればもう大人なんだからと窘められたり。大人から、子供であることと大人であることを都合よく求められる時期なのかもしれない。 雨の中で俯く彼女は、大人なんだろうか。それとも子供なんだろうか。 奇異な目で通行人から見られていたとしても、彼女は微動だにしない。これほど強く降り続ける雨も気にせず気の済むまで泣き続ける姿は、子供のようでもあるけれど、自分に忠実に生きる大人のようにも見えた。 私は彼女に、そのままで泣き続けることを望んだ。 まだ、大人になりきれない小さな大人の彼女に、このままで泣き続けて欲しいと思った。泣きたいときに泣ける大人であることはとても素敵だと思う。雨の中でも気にせずに、人に見られようが服が濡れようが構わずに。 きらりと濡れた頬を認めて、やっぱり彼女は泣いていたんだと思った。 横目で彼女を見つめて私は会社に戻った。 雨に濡れながら泣く人は美しい。 |
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