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| 2004年04月11日(日) 示唆 |
| 夢を見た。 空からもうすぐ雪が降るだろうと思って、夜の空を見上げていた。真っ暗な空からキラキラと光る雨粒が落ちてくる。もうすぐ、もうすぐ雪が降るんだよ、見てなよ。 ベージュのスプリングコートを着てきたのがそもそもの失敗だった。雪なんか降ったら承知しないと思って袖を通したのに、もうそれは雨じゃなくて氷に変わっている。ベージュの生地が濡れて色を濃くしてきた。肩から胸にかけて。 もう帰ろうと黒塗のタクシーをつかまえた。「池袋へ」と伝える前に車は動き出した。この人は行き先を知っているんだろうかと不安になってくる。「池袋へお願いします」返事もせず帽子をかぶった運転手はただ前を向いている。不可思議にも思ったけれど、やがて雪が降ってきたので、私はシートにもたれてずっと外の風景を見ていた。 いつの間にか、私はハンドルを握りアクセルを踏んでいる。ヘッドライトがずっと向こうの道まで照らしていてとても心地がよい。前の車を追い越して交差点をいくつも通り越して、私は走り続ける。誰かを迎えに行かなければとふと思い出す。そうだ、早く迎えに行ってあげなければ、この寒い空の下であの人を凍えさせてしまう。焦ってアクセルを踏み込むとハンドルを操作しきれず、対向車や歩道を歩く人間にぶつかりそうになる。赤信号を無視してガードレールにこすり電柱にこすり、きっと車体はぼこぼこだろう。待ち合わせの場所は思い出せない。けれどどこかへ走り出さないとあの人はきっと死んでしまうだろう。額から汗が滲んで眼が霞んでくる。 急ブレーキを踏んだら、向こうから手を振る人が見えた。「待たせてごめんね」と言うと、彼は笑って首を振った。途端に気が緩んだのか私の手はがくがくと震えてきた。「もうだめなの。運転できない。もう何もできない」知らずに涙が溢れてきて私はぬぐうことも躊躇い、彼はあやふやな笑顔を見せた。その笑顔の意味はなんだろうと私は思った。彼に車の運転を預け、私は助手席のシートに深くもたれたら目を閉じて音楽に耳を傾けた。いつの間にかカーステレオから懐かしい曲が流れている。「雪は降っている?」とたずねると、「心配しなくてもいいんだよ」と彼は答えて車のスピードをあげた。 彼に抱えられて私は病室に戻ると、首まで毛布を引っ張り上げて彼の顔を見上げた。私を見る彼の視線がとても心地よく感じた。彼の髪が濡れている。きっと私の髪も濡れているだろう。それがとても艶かしく思えた。私は手を伸ばして真上にある彼の頬に触れた。彼は愛しそうに私のてのひらに自分の頬をこすりつけた。私はそれを無表情にけれど心地よく感じた。 この夢はいろんなものを示唆している。これからのこと、これまでのこと。 いろんなことを示唆している。とても具体的に、抽象的に。 |
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