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2004年03月28日(日)  雪の降る街からの手紙
「道央・道東」という言葉が天気予報から聞こえる。
札幌のビジネスホテルの一室で私と彼は目を覚ました。
シングルルームを2つ予約していたのに、東京を出発する前の私は、やっぱり一部屋だけ予約すればよかったと思うだろう、そう予感していたがそれは見事に的中した。
昨晩の睡眠不足で私たちは明日の予定を話し合いながら眠ってしまった。布団もかけずテレビも照明もつけっぱなしだった。空調が効いている部屋は寒くはなかったけれど、窓の外の空はとても薄暗く重い。今日は曇りになるだろうという天気予報。私たちは6時に起き上がり支度をして近くの大きなホテルへと向かって、朝のバイキングを楽しんだ。

地下鉄に乗り、私たちは本来の目的を果たすため、約束の医師に会いに出かける。

雪はまだあらゆるところに残っていた。歩道や道路は乾いているけれど、路肩や空き地だろう場所にはかいた分の雪が積み上げられて泥だらけの灰色に光っていた。けれどところどころ歩く道はシャーベットになっていてつるつると滑り、私は用心して慎重に歩いた。氷を踏みしめながら歩くことはとても怖い。急に広がった場所は公園らしく、辺り一面真っ白になっている。歩道の雪がそこに避けられているのか、公園の地面だけは他とは違って随分高くなっている。面白がった彼は踏みしめられた雪がしき詰まっている公園へ入っていき、私は覚束ない足取りでそれを追いかけた。底の氷が解け始めているのか、足を踏み入れるごとに地面が沈み足を取られては抜き取り一歩を進めては地面は陥没する。スニーカーが脱げるのも濡れるのも構わずに私たちは、ただそれが面白くてはしゃぎ回り、雪を反射してとても眩しかった。しゃりしゃりと音が聞こえてかちかちの雪玉を彼は私に投げつけては笑っていた。

風が強く吹き、空から雪が降ってきた。もうすぐ4月になるのに。
この雪はなんて名前の雪なんだろう。綿でもなくみぞれでもなく、まあるい玉のような雪。コートに染み込むこともなくころころと生地の上を滑っていって地面に落ちていく。地面に落ちてもいっとき解けることもなくまあるいまま少しずつ降り注いでいく。とても不思議な気分になって、初めて見たそんな雪をずっと見ていた。ずっとずっと降り続ければいいのにと思った。傘をさすこともなく空を見上げることもなく歩道を歩いていく北海道のひとたち。

昨晩も行ったその店に、夕飯を食べた私たちは向かった。薄暗くて広くてオレンジの照明でカウンターの席。私たちはビールを飲んで、常連のお客とおしゃべりをしながらシェイカーを振る女の子を見つめる。札幌タワーはどの角度から見てもいつも同じなのに、デジタルの時計を表示させながらいま私たちのいる場所を教えてくれる。あのあと、まあるい雪が止んだ空は突き抜けるほど青くてとても美しかった。側面がレンガつくりのデパートに取り付けられた照明さえも洒落て見え、車のライトと混ざってオレンジの光がきれいだった。毎日通った観光インフォメーションの女性はとても親しみやすくて彼女の教えた店はどれもとても美味しい料理を出した。ライトアップされた赤レンガの道庁舎の前に立ちずっと見上げていた。全然寒くなんてなかった。


ホテルに帰るのが嫌で、もう一度駅前の通りを歩いた。
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