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2004年02月26日(木)  雨が降る夜
ざわざわと雨が降っています。
夜の雨は街灯の灯りを反射して、美しく窓にいくすじもの軌跡を描いています。
病棟が消灯の時間を迎えても、外の灯りが差し込んでくるのでぼんやりと明るくなっているような気がします。

腕の皮膚が痛むので点滴を外して、窓辺に立って外を眺めてみます。
薬を飲まなければいけないとは思うのに、少しも飲む気がしないのはどうしてだろう。
床に点滴の針から液体がちとりちとりと落ちています。
病室は街灯の灯りで柔らかなオレンジ色をしています。

みんなはどうしているだろう。
友だちや同僚は、今ごろ何をしているだろう。
別れた恋人は。今ごろ何をしているだろう。
彼に会いたい。彼にどうしても会いたい。
淋しくて、先も見えなくて、これからどうすればいいのかわからないでいるとき、
彼に無性に会いたくなる。

大切なものを失くしたとき、人はどうなってしまうんだろう。
自分にとっては大切にしていたと思っていたやり方が、本当は間違っていたと気づいたとき、人はどうなってしまうんだろう。

人を思いやるってどういうこと?
私はいまの彼をきっと思いやれていないんだろう。
彼の気持ちをわかろうとしてないんだろう。
自分の淋しさばかり訴えて、彼の気持ちがなにひとつわかっていない。
思っていることも伝えたいことも、ひとつも話せず、
突いて出てくる言葉は彼を責めることばかりで、余計に彼を遠ざけてしまっているのかもしれない。

彼に会いたい。
けれど、会うことも叶わない。
ベッドに横たわって一点を見つめて考えてみるけれど、
なにひとついい考えが浮かばない。


風が窓を揺らし部屋に落ちていた雨の影を揺らす。


明日、晴れたとしても、私はこの部屋からきっと出ることはできない。
心がどんどんきしんでいくような錯覚がする。
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