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2004年02月03日(火)  世界は揺れる
ホームで電車を待つあいだ、ベンチに腰掛けて本を読んでいた。
風が髪の毛を舞わせて視界の邪魔をする。
13時30分。電車はまだ来ない。

ぐらぐらぐら、とベンチが揺れる。私の体がゆっくりと揺れる。
地震?
顔を上げ周りを見渡してみる。誰も地震に動揺した様子はない。
けっこう大きな揺れなのに、ほら今でも揺れているのに、誰も気づいてないのかしら?

地震が起こっているとき、電車に乗っていたらどうなるんだろう。
小刻みの揺れがだんだんと大きくなり、やがて線路をゆがめたら電車は脱線して、乗客は皆死んでしまうのだろうか。
山手線の電車が、向こうのホームに滑り込んでくるのが見える。

長い揺れがおさまり、電車は変わった様子もなく次々と平行に並んだホームに止まり、出発する。
俯いて、また本に集中する。少し高鳴っていた心臓が鼓動のスピードを緩めていく。

どれぐらいたっただろう。
今度は、確実に明らかに、揺れが襲ってくる。容赦なく私の体を縦に突き上げる。
本を握り締めて周りの人間を見上げる。ここで大きな地震が起こったら、私は死ぬのだろうか。大勢の人間が集まるこの駅なら、あっという間にパニックになり、押し合いながら出口へと進む群集で、圧死したりするのだろうか。
周りは、先ほどと何も変わった様子もなく、目の前をサラリーマンが通り過ぎ、先ほどから隣に座って本を読んでいる学生は、そのページをめくる手を休めない。

地震、でしたよね?いま。

そう、聞こうかと思った。これほどの揺れに誰も気づかないなんて、明らかにおかしい。けれど誰も立ち止まって辺りを窺う様子もなく、誰も顔を上げて周りを見渡す風でもなく、だから地震はきっと私だけに起こっているのだろう。

私の体がびくびくと揺れ、小刻みに鼓動を高め、世界が揺れているように感じられたその感覚は、ただの痙攣か、ただの貧血か、けれど確かにその揺れは明らかだった。

今も、揺れる。
私の世界はがくがくと揺れる。
その揺れを、しっかりと体で感じて、そして誰かに肯定してもらいたかった。

そうだよ、それは地震だって。私だけしか感じられない地震なんて、だっておかしいもの。
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