雲間の朝日に想うこと


< 一度きりの言葉じゃいけませんか >


其の時の想いを、
口にしたいと。

其の時の雰囲気を、
大切にしたいと。

そう願う故に。



一度放たれた言葉は、
其の場を切り取り形作られた言葉は、
其の瞬時にしか有効に作用しない言葉であり、
勝負は一度きり。






例え其の言葉に、
どれだけの想いを込めようとも。


 「聞こえない♪」
 「もう一回言って♪」

 「駄目。」
 「もうおしまい。」


無条件で甘える貴女に、
同じ言葉を同じ量だけ同じ想いで贈る事は、
決して在り得ないのだ。











貴女が地に降りた頃を見計らって、
携帯を握った。


 「只今電話に出る事が出来ません。」


例え貴女の声で応答するとは言え、
無情にも貴女の携帯は、
伝言を残せと応えるのみ。

已む無く、
俺の言葉を貴女の携帯に託し、
通話を閉じた。










電話を切った直後に、
貴女から折り返しの電話。


 「もしもし?」
 「はいはい?」

 「電話くれたよね?」
 「うん、伝言残したよ。」

 「え?入ってない!」
 「入れたよ!」


俺が通話を閉じる寸前に、
貴女が電話に出た事で。

折角残した筈の伝言は、
何処かに消え失せてしまった。





次々と携帯に入る、
催促の文。


 「小坊主さま♪」
 「メッセージが入ってないよぉ!」
 「オ・ネ・ガ・イ♪」


俺の伝言を携帯に残せ残せと、
執拗に届く催促。












言葉は生き物であって、
其の時を逃がしたら、
時と共に変化してしまうんだ。


勝負は一度きり。
其れが伝言であっても。


2003年07月01日(火)


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