ホテルのロビー、喫茶店などお客さんが増えてきている。土曜日の夜ということもあってファミリーが多い。ぶらぶらしながらインコの鳴き声を聞いていたのだが、どこからとなくピアノの音色がしている。前日と同じ女性が迫力ある弾き語りを披露している。ビートルズからニューミュージックまで、なかには井上陽水を歌唱力豊かに歌い上げていた。 場所は一階のロビー内に設けられた喫茶店の一角なのだが、そこには池があってそのほとりに設置されたステージ上にピアノが置かれている。ちょっとしたPA装置を通しているので、ロビー全体からそして最上階までの吹き抜けで上の階からも聴くことができる。 どうせならと近くで聴いていた。すると「お客様おかけになってください。」と後ろから声が。娘に言われた。「まぎらわしいことしないでよ!」
もういいだろうと部屋に帰ることにした。それにしてもなかなか充実した一日だった。のんびりと一日を過ごすのもいいが、ハードスケジュールでも内容が濃ければ満足度は高いだろうし、限られた日程のなかで動こうとするとあれもこれもとなってしまうのはいたしかたないだろう。
部屋に着くと娘たちはあいかわらず文庫本を手にして読みふけっている。旅行に来てまで読書することはないと思うのだが、どうもこの二人、どこに行っても文庫本を手放さない。やはり親子か。
私はというとそんな悠長なことはしておれない。あしたのスケジュールを作らなければいけないのだ。まあ、この沖縄旅行自体、妻が言い出しっぺで、私は段取りをする人だった。はっきりいって妻はいつどこへ何をしにいくということはわかっていない。アウトラインは知っているのだろうが、中身はまったくわかっていないのだ。ぜーんぶ私が手配した。これからもずっとそうだろう。 事前に行くところは設定していなかった。初日に南部の戦跡と玉泉洞、二日目はダイビングを申し込みをしていたわけだが、それ以外は特に決めてはいなかった。ダイビングの「Nagi」でいっしょのグループになった若いカップルが聞いていた。「行くところを決めていないんですが、おすすめの場所はありますか。」「沖縄に来たからには海洋公園は絶対はずせないですよ。一押しですね。」
そばで聞きながら、あしたは海洋公園に決めた。那覇を基点ににすると、ずっと北の反対方向になるので朝一番にそこに行って、順番に下っていくことにした。ホテルからは1時間少々かかるようだ。できるだけ早く出発したいが、かといって今日の疲れを残しては後が苦しい。 場所は本部半島の端のほうになるが、本部には「パイナップル公園」というテーマパークがある。ここにも行かなくてはいけない。沖縄ではパイナップルもはずせない。その後はずっと下って、思い出の「東南植物園」にも行きたい。こうしてだいたい頭の中では一日のスケジュールを組み立てた。かといって行く先々でコース変更しても別にかまわないのだが。メインエベントも無事終了したので、あとは気楽気ままに楽しめばいいのだから。
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