朝の食事の時だったが、オムレツを焼いているブースでは順番待ちで列を作っていた。それにつられて私も並んでしまった。数種類のメニューの中から一人ずつオーダーに合わせて手際よくオムレツを焼いていくのだが、その技に見とれてしまった。料理人は最初にフライパンの使い方を習得するために塩などを振って練習するようだが、そんなことを想像しながらひとつひとつの動作を注視していた。私の番がくると、「トマト・チーズ」をオーダーした。 まず卵をお玉じゃくしでフライパンに流し入れると、箸で手早くかきまぜ、その上に細切れにしたトマト、そしてこちらも小さく刻んだチーズを乗せ、例の回転をともなった返しわざできれいにまとめあげてくれた。うーん、やはり見とれてしまう技だ。お皿をフライパンの上に持ってきて、くるっとひっくり返すようにして完成だ。アツアツで中はトロトロのオムレツの出来上がりである。こうして一つずつオーダーに合わせて作っていくのだからシェフはたいへんだ。 テーブルに帰って食べていると、いつの間にか妻も並んでいるのが見えた。やはりこういうものは絶対に逃さない習性があるようだ。こちらはキノコ入りのオムレツをだった。これもおいしそうだ。食べながら妻が言った。「うちの息子も朝早くからこんなことをしているのかしら。ちょっとかわいそうな気がする。」このオムレツは朝食でのお話である。
一通りの食事が済むと、妻と娘ははやおら立ち上がり歩き出した。どうもデザートの部に入っていったようだ。まあ、ケーキは別腹とはよく言うが、それにしてもこれ以上食することができるのだろうか。それくらい時間をかけて食べてきた。 ケーキには口うるさい私だが、可もなく不可もなくといったところか。普通のショコラ、スポンジ類、それにデザート用のパン類も種類が多い。もうここまでは手が出ない。仕方ないがあきらめよう、後がたいへんだ。それでもとったものはすべて平らげてレストランを後にした。
もう動く気もしないが、そのままみやげ物店の方向に向かった。あるわあるわ、なんでも揃っている。娘と妻は沖縄グッズを眺めている。私はと言うと健康食品コーナーで店員からいろいろと情報をもらった。やはり効能書きだけではよくわからないが、聞くことで品物の比較もできるし、これぞといった逸品を知ることもできる。
前から気になっていた「ノニ」という果物から採った『ノニ・ジュース』を店頭販売していた。試飲もできるので、さっそく店員のおねえさんに注いでもらった。ほとんど黒に近い強烈な色と、何かしら原液という感触がただよっているその『ノニ・ジュース』をこわごわと口にしてみた。おお、たしかに強烈だ。もうこれは薬だ。ジュースといってもそんなに量を飲むわけではない。おちょこ一杯だろう。それでも今まで味わったことのない異様な味覚はどうも身体が受けつけない。聞くとジュースを発酵させて効能を上げているようだ。
やはりこういうコーナーではご婦人方が集まってくる。見ていると、お客さんにもいろいろなタイプがある。一言二言交わしたあと、すっと買っていく人。ジュースといってもそんなに安くはない。一本5,000円以上したと思う。いろいろと試飲した後、健康談義をして去っていく人。まあ、だいたい試飲をしても買わない人のほうが圧倒的に多い。
泡盛のコーナーにも立ち寄った。初日の「おきなわワールド」でハブ酒を買いかけたが、留まっていた。ここにしかないという文句に釣られそうになったわけだが。 じつはここにも同じものがあった。じろじろと眺めていると店員さんが、「ハブ酒は飲まれたことがありますか。そうですか、ちょっとお召し上がりください。」と注いでくれた。かなり強烈だ。はじめての体験だが、買って飲もうとは思わなかった。妻に言った。「おじいちゃんのおみやげにしようか。」「いいえ、いりません。こんなもの、飲ませないでください。」
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