漆器職人である京都在住の「らいらいけん氏」は、夜久野の漆を使っている。
漆は漆の木から採取した樹液だが、ほとんどは中国から輸入されたものが使われているようだ。わずかな日本産でも大半は東北あたりのものになっている。ということは夜久野産はとても希少価値があるということになる。品質のことはよくわからないが、「らいらいけん氏」のこと、おそらくその品質を求めてたどりついたのであろうことは察しがつく。 人間国宝のうわさが流れる氏の作品をわずかひとつだけ所有している。おわんである。一応、知人ということで破格の値で購入した。しかしその後10倍に跳ね上がってしまった。あー、まとめ買いをしておけばと悔やまれる。
この漆器、思っていたものとずいぶん違っていた。漆のおわんというと、あの黒いぴかぴか光っているものを思い浮かべる。しかし、「らいらいけん氏」の作品は、木目を生かした素朴な味わいがあるものに仕上がっているのだ。それでも何回も塗りを重ねているようだ。

この漆だが、固まるのは単なる乾燥だけではないようだ。「らいらいけん氏」の取り扱い説明書によると、完全に漆が固まるには半年くらいかかるので、大事に扱うよう指示があった。普通の塗料と違って、溶剤が蒸発して乾燥するのではなく、科学的な反応で硬化が進むようである。だから一度固まると、もう溶けたりはしない。
ヴァイオリン、ギターなどの弦楽器ではセラック・ニスという塗料が使われている。まあ、高級品に限られるだろうが。 このセラック・ニスは、ラックカイガラ虫という昆虫の分泌物だ。この虫は体長0.5ミリほどの小さなものだが、木に寄生して樹脂状の分泌物を作る。これは日本ではなく、タイ、インド等の亜熱帯地方が産地になる。漆と同じように木から採取することになる。
このセラック・ニスはアルコールで溶かしている。だからアルコールで拭くと溶け出してしまうのだ。ということは、セラック・ニスかどうかを調べるにはアルコールで拭いてみることだ。 まあ、普通のギターはラッカー塗装がほとんどだろうが、あのヴァイオリンのとろけるような音色を出すには、このニスの品質が大きくかかわっているようだ。
いくら合成塗料が発達しても、所詮、天然物にはかなわないということだろう。
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