ここに柳田邦雄の『ガン回廊の朝(あした)』という本がある。
今から20数年前に初版となっているが、買ったのは文庫本で上下2巻となっている。その後、俳優の児玉 清が出演したNHKのドキュメンタリー番組として放映された。題名は『ガン回廊の炎』。本にもなっている。 最近になって、この録画ビデオと蔵書庫から本を引っ張り出してきた。知り合いの女性が、某大学病院の検査助手として勤務をはじめたので、見せてあげたかったからだ。
『ガン回廊の朝』を知ったのは、もう十数年前になろうか。昭和30年代に国をあげてガン撲滅に立ち上がる、闘魂燃えたぎる医師たちの記録であり物語である。仕事に情熱を注ぐ男たちの生きざまをリアルに描いている、今でいえばプロジェクトXといったところか。
いま、文庫本を取り出して、茶色に変色したページをめくると、あらためて当時の医師たちの信念と、仕事に賭ける情熱といったものがせまってくる。妻と娘が没頭している推理小説もいいが、これは事実なんだというノン・フィクション小説に勝るものはないと勝手に悦にいっている。 この本は、専門的な部分も多く、全部を読みきるには結構骨が折れる。その点、後年に刊行され、テレビでも放映された『ガン回廊の炎』は、ストーリーとしては同じなのだが、読みやすくなっている。まあ、ノン・フィクション賞を受賞した『ガン回廊の朝』は、それだけ格調が高いものとなっているのも確かである。
それにしても、ガン撲滅に生涯を賭ける医師たちの戦いには、敬服するのみである。
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