はっきりいってオペラは好きじゃない。聴いても内容がよくわからないのと、どうもあの歌声と歌い方には、拒絶反応を示してしまう。 だが、テノール界の最高位に君臨するホセ・カレーラスは一度聴いてみたいと思った。CD clubの特集を読んで、彼の生き方に共鳴を覚えたからである。
音楽ジャーナリストの寄せた一文にこうある。 「カレーラスの歌には常にヒューマンな味わいがただよっているのも事実である。ひとりの生身の人間が歌っている、そのぬくもりが伝わってくるのである。現在はなんでも簡単にすませられること、楽をして大きな成果を得ること、苦労をしないにこしたことはないとされる時代である。カレーラスのようにコツコツと実績を積み上げ、ビッグスターになってからもひたすら努力あるのみ、などという生き方は敬遠されるのこもしれない。しかし、そんな生きかたに引きつけられる人もいるのである。」 そう、私は引きつけられたひとりである。そして、CDを購入しようと思ったわけである。
カレーラスは、どんな小さなコンサートでも、最高の歌を届けようと全力投球するそうだ。こんなエピソードも聞いたことがある。3大テノールが競演するコンサートのリハーサルで、パバロッティ達が軽くのどの調整をするのに対して、カレーラスはリハーサルといえども、全身全霊で歌っていたそうだ。 彼は大病を患っている。その白血病から立ち直った後に、ピアノ伴奏によるリサイタルを世界各地で行なったいる。そこでは、拍手の続くかぎりアンコールを歌い、聴衆に応えたそうだ。
じつは、最近、カレーラスは岡山で公演をしている。ニュースなどでも話題になった。高額なことと、あまり興味がなかったなどでけっきょく行っていない。いま思えば、ちょっと悔やまれる。
CDでしか味わうことはできないが、カレーラスの全身全霊を込めた歌声にひたってみたいと思う。
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