以前に買っていたスコット・ハミルトンのCDをひさびさに聴いてみた。
これ、送られてきた時、ほんのちょっと聴いただけで、そのまま他のCDといっしょに並べてしまっていた。ちょっとCDの探し物をしていたとき、おうおう、こんなのがあったっけ、と取り出してみたわけである。 『煙が目にしみる』『星に願いを』などなど、よく知られて曲が入っている。とにかくスコット・ハミルトンはオーソドックスで聴きやすい。フレーズがとてもスムーズに流れる。それに魅力は、なんといってもサブトーンを駆使した心地よい音色だろう。
どちらかというと、ライブハウスで聴き入るというよりは、ホテルのディナーショーなんかで優雅にBGM的に聞くのがいいかもしれない。ホテル・グランヴィアでも演奏している。以前に、このホテル・グランヴィアで、テナー・サックスのマイケル・ブレッカーを聴きに行ったことがある。マイケル・ブレッカーは技巧派テナーとして名高い。もう、そりゃあ、ハイ・ノートをハイ・テンポで吹きまくる。そうかと思うと一転して、ラウンド・ミッドナイトをサブトーンで聴かせる。
そういえば、K・恵さんが、「テナーの音がいまいち鳴らないんです・・・。」と言われるので、手元にあったオットーリンクのメタルを吹いてもらったところ、なかなかグーということになった。番手はセブン・スターだが、まあ一般的なところだろう。吹奏楽といえども、演歌やポピュラーのソロが多いと、セルマーのCワン・スターではちょっと非力だろう。がんがん鳴らすことを覚えれば、元にもどしてもよく鳴ると思う。
もう一人、私のお気に入りテナーとして、アーチー・シェップがいる。こちらは、スコット・ハミルトンとは正反対で、ゴリゴリでハードに押しまくる演奏だ。しかし、最近は歳とともに円熟味が出てきたと解説されていた。手元にあるCDは、そうした歳からくる渋さというか、歌心があふれた演奏になっている。タイトルはバラードなんだが、やはりそこは、かったるいものでは全然なく、昔の豪放テナーに恥じない内容となっている。

このCD、じつは上田啓二先生にも聴いていただいた。理由はこうである。 何回か前のコパン発表会で、シャンソンの『パリの空の下』を上田啓二先生がアルト・サックスで演奏された。さわやかで、おしゃれな雰囲気があふれた曲だった。さっそく私もコパンで、今度はテナー・サックスで演奏した。ピアノのK・千絵さんの好サポートもあって、我ながら出色の出来だと思っている。
ここでアーチー・シェップは、豪放ながらも『パリの空の下』のメロディーだけは、なんとか浮かび上がる演奏をしている。ギャオギャオ、ゴーと爆裂はさせながら、彼ならではの演奏だ。上田啓二先生にコメントをいただいた。「やっぱり演奏は心だよ。」
もう歳だ、といわれる年齢になりつつあるが、演奏に対する好奇心は、増す一方である。
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