管楽器にとってマウスピースの違いは、音に大きくあらわれる。
特に、サックス、クラリネットなどの木管系では顕著で、音質まで変わってしまう。クラシックにジャズ系のマウスピースを持ってこようものなら、一発で音楽がぶち壊しになる。 おそらく、みんな、音に悩む分だけマウスピースの数を持っているようだ。何十本も。かく言う私は、ほんの数本、いや、使うのはずっと一本だけ。 これは悩んでいないというのではなく、無頓着なのかも。
マウスピース選びで問題なのが、同じ種類、番手でも違いがあるということだ。要するに、まったく同じ物は2本とないという問題がある。 人から借りて、試しに吹いて調子が良かっても、それと同じものを店で買うことはできない。もうそれしかないのだから。
原因は、マウスピースの製作は人の手によっているというところが大きい。全部が全部、手作りということではないが、肝心の仕上げ工程は熟練工が一本一本、手で削っているようである。それは、きちっとゲージなどで測定しながら加工はしているのだろうが、微妙な差はどうしても出てしまう。
いや、別にマウスピースのうんちくを語るほど、知識があるのではない。ただ、製作方法に興味があるだけなのだ。 プラスチック製(正確には、ハード・ラバー製)の、マウスピースは、大量生産できそうなのだが、じつは形状的にはむずかしい。 私はプラスチック関係にちょっとくわしいのだが、ふつう、プラスチック製品は、鉄でできた金型という型に流し込んで作る。だから、同じ物が大量生産できるわけである。 ところが、プラスチックのマウスピースは、中に穴がある。これが厄介なのだ。まっすぐな穴なら、まだよいのだが、形が変化している。 これを金型でつくるとなると、ちとむずかしい。というよりはできないと言ったほうがよい。おそらく金型ではまっすぐな穴を作っておいて、微妙な変化を熟練作業者が加工するということになるのだろう。
ところで、プラスチック製のものは、そこらへんで売られているふつうのプラスチックとは違う。ハード・ラバーというくらいだから、ゴムでできているのだ。ゴムに硫黄とかを混ぜて、加硫というゴムを硬化させる工程を経て作られる。これがエボナイトという材質のやつだ。 けっこう複雑なのだ。あー、らいらいけん氏が愛用しているヤマハのものは、ふつうの安いプラスチックだと思うけど・・・。たとえていうなら、なべのふたの取っ手と同じ材質で、フェノールという。これ、落とすと割れるし、すぐにちびて減ってくる。いや、失礼。
それにしても、マウスピースひとつとっても、奥が深い。ちょっとこれにはまると抜けられなくなるかも。まあ、ほどほどにして、練習に専念しよう。
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