2012年06月11日(月)
ななどあメモその2


 字数制限上の分割です。
 ちなみにエンピツの一日の文字数制限は8000文字、原稿用紙換算20枚分です。さらにポメラの一ファイルの制限も同じで大変便利です。


 まあ、コネタはさておき、続けます。



[ななどあメモ:七つの扉の物語その2]


[家族]

 憤怒の場面の後、ここでショートコントのように(笑)挟み込まれる、ユディットに会いに来た父(強欲)と兄(憤怒)という場面
つかお兄ちゃん、さっき池に顔つっこんでたばっかりなのに!(笑)

 父は引き返そうと言い。
 兄はユディットは公爵の城では幸せになれない、と根拠のない持論を繰り広げ。
 兄のユディットへの恋情を指摘する父。
 父がユディットを強姦未遂した事を暴く兄。

 なんつう家族だ(笑)そんな会話が堂々めぐります。

 二人の唯一の共通点は「神の教え」なのだと思う。
 けれども敬虔と呼ぶにはほど遠く、ただ「神の教えに背きさえしなければそれでいい」とでも言うような。
 ユディットを押し倒しても敬虔な神の子としてのつとめは果たしていると豪語する父。
 「神がユディットをおつかわしになった時から俺たち親子は試されている」と言う兄。
 けれどもどちらもユディットのことを理解していないのは同じ事で。

 ある意味、ユディットは生け贄の子羊なんだろうなと思ったり。
 彼らの元に捧げられた、彼らが神の教えを遵守していると証明するための、存在。


 それじゃあユディットも幸せになれるわけないわなぁ……





[嫉妬]

 六つ目の扉。誰も知らない中庭につづく扉。


 舞台セット2階下手から入ってきて、中庭に落ちる光の、そのまぶしさに眼を細めるユディット。
 そして目の前に自分の好きなヴェルレーヌの詩を謡う白髪の老人。その光景にほっとした表情を見せるユディット。

 老人とのヴェルレーヌ談義。初めて分かち合えるひとと出会えた喜びをあらわにするユディット。そして自分とはかけ離れているから、とヴェルレーヌへの思いを語る。

 最初はユディットがヴェルレーヌを好きな理由は、「後年、神に帰依したヴエルレーヌ」の面に惹かれてなのかと思ったけれど、ユディットははっきりと、自分とは異なるデカダン、退廃にあこがれていると言う。

 それはまた罪ではないのだろうか、となんとなく。

 こっそりと秘密の扉をひらくようにヴェルレーヌの詩集を開くユディット、それがまだ彼女が今の家にくる前の、ひそやかな、楽しみ。なんて(SSしないで)。

 「嫉妬」と一緒に「枯れ葉」をうたうユディットは本当に楽しそうでかわいくて清らかで。でもその影に彼女がデカダンスに惹かれていた、がひっかかります。
 聖書とヴェルレーヌの詩集を携えてやってきた12歳の少女という構図に。


 すっかり意気投合した風の二人、これからもここに来ると言うユディットに、あなたは危険だと言う「嫉妬」。
「あなたにとっても、そして私にとっても」
 そうして明かされるこの老人の罪。好きだった女性が結婚した、その嫉妬心をおさえきれずに、彼女の首を切ってプレゼントボックスに入れて夫に送った。

 「またやるでしょうね、私はこの嫉妬心をどうしてもおさえることができない」

 「嫉妬」に怯え、「嫉妬」から身を翻し、眼をそらすユディット。そんな夏希さんに萌え(笑)
 そりゃあんなかわいいおじいちゃんが、やっぱり罪人だったんだからショックだよねぇ。

(ところでここの場面の解説でどっかの雑誌で『嫉妬』は博識なユディットに嫉妬した……」え?ユディットに恋してしまったから嫉妬じゃないの?)(真顔)

 そうしてここまで聖書片手に罪を断罪してきたユディット。果たしてユディットは「嫉妬」の罪を「罪」としたのだろうか。
 聖書に照らし合わせれば、罪。
 けれども彼女の手には聖書とヴェルレーヌがあるわけで。
 そんなユディットの中の相反するものがかいまみえた、って、まあ深読みだよね、うん(笑)。

 でも私はひっかかるのだよ「自分とは正反対だから惹かれる」に。





 六つの扉を開け終えたユディットは問う。
 六つの部屋はからっぽで、そこにいるのは一人の罪人……「この城は、監獄」
 けれども監獄ではなく、博物館だと答える執事。公爵による、罪のコレクションという。
 「暴食」「肉欲」「強欲」「怠惰」「憤怒」「嫉妬」とこれまでの扉の鍵を数える執事……。 それが「七つの大罪」だと気づくユディット

「残る一つは、傲慢です」




[傲慢]

 七つの目の扉は執事の部屋。


 執事の部屋には明かりがなく、見えない恐怖を示唆する執事。
 足下に蛇がいるかも、虫がはいつくばっているかも、誰かがいて足をつかむかも…「やめてください!」(と怯えるユディットはかなりかわいい)(はいはい)。

 そうしてここを自分の部屋だという執事。そして自分は七つ目の大罪『傲慢』だと。
 またここにも罪人、と怯えるユディットに自分は何も犯していないという「それがまた罪なのかもしれません」

 執事は公爵の陰だから、「影は暗いところにいるのがいいでしょう?」と明かりがない事を説明する。それがなんかじわじわと怖い。

 そうして明かされる、「公爵に8歳の時から遣えていた「執事」」。
 公爵よりも年嵩に見え、明らかに老境にさしかっている執事にユディットは「公爵が8歳の時から」と返すもすぐに否定される。
 そうして公爵の時は止まっているという。執事が「8歳の時から」遣えているが、公爵のお姿は変わらないと言う

 ありえないというユディットになぜそう言い切れるかと言う『傲慢』。あなたが何を知っている?この世のすべてがわかっているわけではないでしょう?人が知っていることなんてせいぜい一パーセントにも満たないだろう、と、それでいてわかったふりをしてわからないことは拒絶する、それを傲慢としてなんと呼ぶか、と。
 そうやってユディットを追いつめていく。

 わからないことを否定するそれこそ傲慢
「ユディット様もなかなか傲慢でいらっしゃる、この部屋を鍵をお譲りしてもいいくらいだ」とその鍵をユディットにむかって投げ捨てる『傲慢』。ガチャ、と舞台中央に落ちる鍵。

 そうやって完全にユディットが覆されて、追いつめられる。
 彼女の世界が覆された。聖書の教えで罪を断罪してきたユディットがその罪を問われている。

 公爵を神とあがめる『傲慢』のその狂気。
 そこにいる神はユディットの世界の神ではない。その狂気に追い詰められる。
(大阪の千秋楽は本気で怖くて泣いたらしいよユディットちゃん、かわいいし、なんというか芝居の力を感じるなあ…)

 そうして怯えて階段につっぷしてしまったユディットを、一瞬、威嚇するように近づき、そして高らかに笑いながら去っていく『傲慢』。その時、鍵をちゃらちゃらこれ見よがしに鳴らしていくのも、心底、怖かった。
 この鍵、というのが実に効果的で。七つの扉を開く際に、執事がその鍵を高くあげて下におろす。それに併せて「ガチャン」と鍵が開く音。


 そうやってユディットを案内していた「執事」が最後にユディットを追いつめた。七つの扉をめぐる間、ユディットをどんな風に見ていたんだろう……。
「肉欲」の場面では階段上から二人の踊る様を無表情で見ていて、それが下からの照明に照らされて心底怖かった。
「憤怒」の場面で部屋に入ってきたとき、憤怒を刺激しないように「しっー」っとやるお茶目さもあった。
「嫉妬」の場面では階段上に腰掛けて、歌う二人の指揮をとるようにご機嫌で(私はテルミンを弾いてるように見えた)(笑)
 そんな「執事」が『傲慢』としてユディットを追い詰めた。





 そうして七つの扉をめぐりながら、七つの罪を前にして、聖書で断罪してきたユディットが翻弄され、覆される。私にはそんな物語に見えたのです。


 七つの扉と七つの罪、そしてユディット。
 さあ伏線はたっぷりとはられた!これからいよいよ本番!



 が、ちょっとここから物語はなんか、あ、あれな方向に……



(いう訳で更に続きますよ)






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