2006年06月09日(金)
「金平糖(たま)は、二発」


 ……………。
 ……………。
 壮シナ解散か(ため息)(そこなのか!)。




 しかし私には壮真飛というかけざんがあります(そこにいくのか)。
 という訳で、壮一帆さんへのエールとして、去年のメルマガでやったものを土曜日の日記に忍ばせておきます。うわそんなエールいらねえよ!!(笑)(帰ってきたら、削除します)。




 で、今日の本題はこっち。








[フェット・アンペリアルSSそのに]


 僕たちは幼い頃に両親と死に別れ、以来姉さんが僕の父親代わりであり母親代わりだった。僕の面倒を見るために姉さんが就いた仕事は「エージェント」。その事を知ったとき、僕はいてもたってもいられず、15になるかならないで「エージェント」になった。姉さんはすごく反対したけれど、僕の為にそんな危険な仕事についた姉さんを僕は見過ごすことなんてできなかった。
 姉さんには幸せになってもらいたい。できればこんな仕事は辞めて、普通の女性として結婚して幸せになって欲しい。僕を育ててくれた姉さんに幸せになって欲しかった。ところが姉さんも僕も存外この仕事かむいていたようで…ならば僕が姉さんを守ろう。いつかエージェントを辞めて幸せな花嫁になるその日まで、僕が姉さんを守るのだと、心に誓った。
だけど
「君のことは僕が守るから」
 なんだ、この男は。


 ウィリアムの弟アーサーが、戦地から休暇で戻ってきた。
「ひどいじゃないか、一度も手紙に返事をくれず」
「兄さんだって、昔そうだったじゃないか、学校に入った時も軍隊に入った時も」
「あれは…いやなんだお前仕返しなのか大人げない」
「大人げないのは兄さんのほうだったじゃないか」
 端から見れば兄弟喧嘩。しかし二人を知るものはそれが単なる喧嘩ではないと知っていた。ずっと本当の事を言えなかった兄弟は、兄弟になってからずいぶん長い時間を経て、兄弟喧嘩ができるようになったのだ。僕らはそれを知っているから、アーサーの休暇の度に繰り返される兄弟喧嘩をほほえましく見守っていた。
「手紙を出さなかった分、今日は夜通しお前の話を聞くからな!」
「わがままだなぁ、兄さんは」
 なによりも、兄弟喧嘩をしている当人達がそれを兄弟喧嘩とは思っていないのだから。
 水入らずでバーに出かけて行くのを、僕は見送った。兄弟っていいなと思う。僕には姉さんしかいないから、兄という存在にあこがれて……ふと、ニールと目があった。
「いいんだよ、兄さんと呼んでくれても」
 いずれそうなるからね、とニヤリと笑う。姉さんはなにも聞こえない振りをしているけれど、そのうなじが微かに赤い。
 なんだ、この男は。
 いやなんでこの男なんだ。そんな姉さんを窘めようとしたら、ニールがさらに何かを言おうとしたから
「結構です、間に合っています」


 僕が姉さんを守るのだと思っていた。
 僕が姉さんを幸せにするのだと思っていた。
「君の姉さんを、口説こうと思うんだ」
 軽い言葉とはうらはらな真剣な眼差し。
 いつもの皮肉めいた口調ではない真剣な声。
 そんな風にくるとは思っていなかったから、正直僕は動揺した。何か言い返したかったけれど、なにも言えなかった。
「君の姉さんを幸せにしたいんだ」
 それは僕がすることだったはず。僕はむっとした顔をした。
「君の事も幸せにしたいんだ」
 なんだ、この男は。
「それ、口説いてるの?」
「かもしれない」
「何言ってんの?僕男だよ、それともそういう趣味?」
 精一杯の反撃。けれどもニールは真剣な表情のままで言った。
「男じゃない、僕の弟だ」
「誰もいいなんて、一言も言ってない!」
 僕が皮肉っても、僕が不機嫌になっても、僕が怒鳴っても、ニールは一向にその態度を変えなかった。真摯なまなざしで、僕を見つめた。またしても、僕はたじろいだ。
「……僕が姉さんを幸せにするんだ、そして僕はそれで幸せだから」
 だからあんたが出る幕じゃない、そう冷たく言いたかったのに、どうして声が震えるのだろう。
「ごめん……じゃあ僕を幸せにしてほしい」
「はぁ?」
「君の姉さんを幸せにするからなんて、君を幸せにするからなんて、考えてみればおこがましいのかもしれない。だから僕を幸せにして欲しい」
「何それ」
「シンシアと、君と。きっと二人が僕を幸せにしてくれると思うから」
「……何、その自信」
「自信はない」
「じゃあ」
「でも、確信はあるんだ」
「……」
「だめだろうか、僕たちが家族になるのは」
 なんだ、この男は。
 何をそんなに真剣に僕を「口説いて」いるのだろうか。そんな僕の事なんかお構いなしに、姉さんを奪っていけばいい。実際、ニールは既成事実とばかりに僕たちの家に度々遊びに来ては、ご飯を食べて、まるで家族同然に振舞って、姉さんはそれを「仕方ない人ね」と笑ってすごして、僕はそれにいつもきりきりと怒っていて、姉さんを守る決心を何度も新たにしていて、それなのに
「……」
 本当は、気づいていた。
 姉さんを幸せにするのは僕ではないことを。いや、僕だけではないことを。
 姉さんを守るのは僕ではないことを。いや、僕だけではないことを。
 姉さんを愛していることを。姉さんが愛していることを。
 そして、僕もまた、本当は彼の事をとても好きなことを……。
 うなだれた僕を、ニールがやさしく抱きしめた。そして耳元でありがとうと言った。僕は聞いた。
「…………幸せ、ですか?」
 彼は身体を少し離して、満面の笑顔を浮かべた。答えは不要だった。
「君は?」
 きっと僕も、答えは不要の顔をしているのだろう。



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 半端に萌えて、半端に書いてしまいました。ニール×クリス(ええ?)(笑)。
 こちらも私にとっては十分兄弟萌えカテゴリーです。


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