「静かな大地」を遠く離れて
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2001年12月25日(火) 世界が内包する音

題:191話 戸長の婚礼11
画:薬瓶
話:おまえ、私の嫁にはならないか

騎乗の求婚。シチュエーションとしては、なかなか良いですね。
日高が馬の国、緑の国であることの原神話のように美しい光景。
光と風、海があって、川があって森があって、緑の牧草地が広がる。
冬はひたすらに真っ白な“すばらしい銀世界”だけに、期間限定の
萌え立つ緑の季節は、生命の息吹にむせかえる。子馬もいるし(^^)

至福の恋人たちの時間。これから三郎がどんな境涯に陥るにしても、
こういう幸福な時間がたしかに在ったこと、それは消え去らない。
幸福と災厄は隣りあって存在している。

世界が内包する音を顕在化させた「幸せ系」のCDが手元にある。
北海道の田原ひろあきプロデューサーの手になる最新の仕事。
http://www.booxbox.com/

■長根あき「Mon-o-lah モノラー=母なる大地」
 アイヌ民族の口琴「ムックリ」が歌う、
 「モノラー=母なる大地」の響き。
 参加アーティスト:EPO・等々力政彦・嵯峨治彦・渡辺亮

竹のムックリは僕も弾いてみたことがある。倍音は出るのだけれど、
それにさまざまな綾や節をつけないと「演奏」にはならない。
びょんびょん♪から先、 そこが難しい。
が、この長根さんのムックリの彩なす音たるや、一体なんだろう?
これはコトバで説明するのが空しい、聴いてもらうしかない。

シュタイナー教育では、子供に最初に与えるシンプルな弦楽器を
大事にするらしい。ペンタトニックだけを奏でる楽器で、気分に
まかせて弾いても、不協和音ではなくちゃんと音になる。
子供はそれで自然の音を模倣したり、感情を音で表現することに
トライしたりして存分に遊んでから、いわゆる本物の楽器の稽古
に移行するのだという。いきなりヴァイオリンやピアノのお稽古
を、しかも無理矢理やらせたりするのは有害かつ危険なのかも。
そう考えるとムックリなんかは、究極の「原楽器」かもしれない。
あくまで口というか身体が楽器で、そのアタッチメントみたいな。
ヴァイオリンやピアノも、遣い手の演奏家たちにとっては同じ
ように身体の延長上にある外部装置みたいなものなのだろうな。

こんなマイナー極まるCDがちゃんと手元に届き、しかも沢山の
人の支持を得ている。ネットを介して、届くべき人のところに届く
べきものが届く。マス・プロダクトにも幸福と災厄が混ざっていた。
それがいま、部分的な現象かもしれないけれど、広くて速くて濃い
フィードバック・ループがあちこちに形成されている。
キャラメルの千秋楽は、スカパーで生中継、かつ池袋と神戸の会場
で同時中継もされた。巨大メディアよりも、小回りの利く、面白い
ことに目がない人がいるチームの手で革新は進められて行く。
思いっきり個人的=身体的なライブの部分と、ネットとの結合。
「Mon-o-lah モノラー」が僕の手に届いたのも、田原ひろあき
プロデューサーの活躍おかげなのだ(^^)

手ざわりのある未来。それを求めて、個であることを追求しよう。


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