「静かな大地」を遠く離れて
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2001年11月13日(火) 朗読ディストピア

            (※眠くて誤字脱字だらけにつき翌日若干補筆)
「朗読ディストピア」うーん、良い題だ(笑)
もう内容書かなくてもいいくらい、タイトルで達成感を感じてしまったので寝ようかな(^^;
相変わらず/例によって事態の推移に思うところがあって沈黙しているわけではない。
単に無精なだけ。
「ディストピア」と「朗読」の二つが最近の日々のマイブーム的様相を示していて、
それを直結させるとひところ大人気だった椎名林檎のアルバムタイトルみたいな響きが
可笑しかったので採用。

まずディストピア話。
ユートピア/ ディストピアという対語としてよく使う。
僕の身辺でも“うっかり”読んでしまって被害者続出の篠田節子『弥勒』(講談社文庫)
をはじめ、最近どうも閉塞感あふれる(<変な表現だ 笑)創作物に当たることが多い。

11月3日にサンシャイン劇場で観た「カッコーの巣の上を」は、今井雅之さんが出演
されているので足を運んだのだが、精神療養施設のワンシチュエーションものだった。
閉塞感の塊のようなアメリカン・ナイトメアな話。終演後、重〜い気分で池袋の街へ(笑)
作中、ドリームキャッチャーが舞台上方に象徴的に登場するのが印象的。
11月9日には紀伊国屋劇場で「ある憂鬱」。南果歩さん主演。キャラメルの大内厚雄氏
が客演している。これも内容より役者さんの線で観に行ったのだが、閉塞感と痛みの塊(^^;
現代の北海道が、ある種のディストピアの背景として描かれているのは関心の範疇。
11月11日には悪いことに(?笑)俳優座劇場で「華氏451度」を観てしまった。
ある意味、ここで「ディストピア」と「朗読」というか暗誦がもろリンクするわけです、
「華氏451度」を知ってる方ならよくおわかりの通り。

そんな中の11月10日の日曜日は、いわば朗読の日。
昼間は、ご近所の近代文学館で開かれた「声のライブラリー」。
夜はテアトル銀座の「メーリング・ドラマ フレンズ Mail@Drama」を観劇。
これは脚本が飯島早苗さんで、斉藤由貴さんと七瀬なつみさん二人の「メール書簡体」で
描かれる話。北海道の栗山町の高校の同窓生が、トウキョウと札幌でメールのやりとりを
する、そのメールの文面だけでほとんどのセリフが構成されている。
知る人ぞ知る?崎谷健次郎さんの生演奏、生うた付きで、舞台上方のスクリーンに
それぞれのコンピュータのディスプレイや、イメージのスチール写真が出たりして
なかなか芝居、音楽、ヴィジュアルの構成が楽しく観られた。
#なにげに崎谷さん懐かしい。斉藤由貴さんがアイドル離脱しかけの頃のアルバムって
 崎谷さんが関わっていて、すごいいい曲、好きな曲があったのを覚えている。
「ラブレターズ」みたいなリーディング・ドラマの新しい形式としても面白い。
飯島さんの脚本もツボを押さえていて、30代女性なんかが観ると琴線かき鳴らしだろう
と思いつつ、結構80年代の世代の感覚が我が身にも懐かしかったり。ウェルメイド系。
北海道の雪が降る直前の空気の匂いも思い出させてくれた。
ライブのオーディオ・ドラマ、とでも言おうか。ちょっと作ってみたい系(笑)

さて話は朗読である。
読んでないけど斉藤孝『声に出して読みたい日本語』(草思社)が売れているらしい。
コトバと声と身体。その強い連関。舞台演劇に関わる人にとっては自明なことなのだが、
教育とかの局面で、あまりに軽視されてきた部分だと思う。以前ここでもそんなことを
書いた覚えがある。キャラメルボックスの成井豊さんの演劇メソッド本に触れながら、
言葉と声と身体の連関、それと他者とのコミュニケートを「実技」としてエクササイズ
する頭をもう少し持てば、「救われる」「効果があがる」若い人も少なくないのでは?
…ってなことを意外と真面目に書いた。
演劇をやる、となるとひどく特殊なことのように思えてしまうだろうけど、朗読なら
一人で、ウォーキングより簡単にできるだろう。

しかして、本を声に出して読む、なんてことを普段やりますか…?
僕は極々たまにやる。大抵は煮詰まった夜中(笑)
以前、野田秀樹の戯曲『キル』の一部分というのもやった。
御大の作品なら『〜ティオ』なんかやりやすそうだけど、僕がやったことあるのは
「骨は珊瑚、眼は真珠」で、あの特殊な視点の一人称はシブイ役者さんで是非CD化
して欲しい、と思っているくらい“朗読もの”として好きな作品。
自分がやるときもイメージキャスト・橋爪功さんのつもりで読んでた(笑)
あれは1時間くらいかかって、丁度いい長さ。
ある種、音声として朗読するのに向く気分の作品と、そうでない作品が如実にある。
“肉声”というのが似合わない作品もあるのだ。
たとえば「スティルライフ」はやめたほうがいいと思う(^^;
寮美千子さんの『星兎』なんかは1時間半かかる。
寮さんもそうだけど、自作の作品のリーディングをやられる作家さんもいらっしゃる。
古井由吉先生の素晴らしいお声での朗読は一度、生で聴いてみたいと思っている。

なんにせよ、自分で声に出して読んでみれば、それが心地良いかどうかわかる。
あと同居人のいない方は、好きなように何でも読んでみられるといい。
小説ではなく短いエッセイなども、NHKのベテラン・アナウンサーにでもなった
つもりで丁寧に読むと、結構落ち着いたりして心地良い。
『むくどり通信』の一節とか須賀敦子さんの『ヴェネツィアの宿』の一節などもよし。
お金も設備もかからない趣味として、周囲の人にも勧めていただきたい(笑)
阿刀田高『怪談』(幻冬舎文庫)の主人公もやっていたけれど、目の不自由な方の
ためのボランティアでテープ吹き込み、という目的を持ってやっている人もいる。

ブームになれば、オーディオ・ブックの類も売れるだろうし、音声データがネット
から落とせるような時代も来るかも知れない。
橋爪功さんや江守徹さん寺田農さん岸田今日子さんや白坂道子さんが「家元」級か(^^;
あるいは伊武雅刀さん、掘勝之祐さん、永井一郎さんなんかもシブイ位置。
昔、小泉今日子さんが吉本ばなな『とかげ』を読んだCDが出ていたけれど、
若い女性のリーディングも、声が良くて朗読の技術と演技力があれば魅力的だ。
FMでやっていた「恋する音楽小説」の常連だった、あの声優さんの朗読も大好きだ。
たとえば、嶽本野ばら氏の『ミシン』(小学館)の朗読なんか、是非聴いてみたい♪
『カフェー小品集』でもいいけど、『ミシン』所収の「世界の終わりという名の雑貨店」
 の一人称“僕”がきっと良いのだ。
#あぁ、思わずマニアックな細い道に入ってしまった。こういうのも読んでるの(^^;

というわけで、「未曾有の“朗読ブーム”到来!」というネタを世の中に流布させよう
と目論んでいる。…って、みうらじゅん氏の影響が色濃いですな。
キャラメルボックスの成井さんの本で「二人朗読」とかのメソッドが紹介されていたが、
そこから派生しての“朗読プレイ”に走るカップルなども急増中、とかね(笑)


…え〜、“本題”の「静かな大地」のほうですが、結構書くべきことはこれまで
いろいろ書いているし副読本もご紹介していますので、遡って復習していただければ
ありがたいです。以下の日録まとめ書きは個別にコメントつけません。
「100冊」の中の本をお読みになるのもよろしかろうと思います。
船戸与一『蝦夷地別件』(新潮文庫)と北方謙三『林蔵の貌』(新潮文庫)あたりは
押さえておくと、三郎君の「悲劇」を歴史的広がりの中で捕まえられるかも。

今後ここでは、さらに『武揚伝』の周辺補強にも努めたいと思っています。
鈴木明『追跡 一枚の幕末写真から』(集英社)の再読を始めましたが、この本は
もうホントにメチャクチャ面白いです。図書館でも古書店でも即読みを奨めます。
以前から、そう思ってはいましたが、『武揚伝』後に再読してさらにビックリ。
佐々木譲先生は中島三郎助が主人公の新聞連載を考えてらっしゃるようですが、
ことによっては、そっちの併走を…って、そりゃ大変すぎるか(^^;
あ、佐々木先生の旧作『昭南島に蘭ありや』今月文庫になりますぜ>南島属性の方(笑)

てなことで、今週はともかく来週はまた沈黙状態が予想されます。

励まし、リクエスト、ネタ提供のメールをお待ちしています♪

11月 5日(月)
題:143話 鹿の道 人の道23
画:ミシン糸
話:その無念さは如何ばかりであったでしょう

11月 6日(火)
題:144話 鹿の道 人の道24
画:ミシン針
話:開拓使には新天地の豊かな暮らしを約束して移民をつのった責任があります

11月 7日(水)
題:145話 鹿の道 人の道25
画:ボビンとボビンケース
話:アイヌはほんとうに困ってしまいました

11月 8日(木)
題:146話 鹿の道 人の道26
画:メジャー
話:多くのアイヌが町に降りてきました

11月 9日(金)
題:147話 鹿の道 人の道27
画:ナフタリン
話:静内に来たことを父上は悔やんではいらっしゃらなかった

11月10日(土)
題:148話 鹿の道 人の道28
画:剣山
話:私はこの馬鈴薯の分けかたを考えていたのだ

11月11日(日)
題:149話 鹿の道 人の道29
画:燭台
話:万一この薯の一件が知れたら、ここから追い出される

11月13日(火)
題:150話 鹿の道 人の道30
画:コルク抜き
話:種が残って播く人が死ぬよりは、播く種がなくとも人が残った方がよい


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