(昨日の日記の続きです。未読の方は昨日の日記「2分前のためらい」からお読み下さい)
「…密」 柔らかい髪に頬をうずめて、都筑は大好きな人の名前を囁いた。 それだけで心が震える。胸の奥が痛い。 どうしようもなく、愛しい。 「密」 何度呼んだら、何度囁いたら気持ちは届くのだろう。 もどかしい気持ちのまま、都筑は密を抱きしめ直した。 「…都筑」 密が名前を呼んでくれる、その声が好きだ。 小さいくせに、胸の奥深いところまで響く。 一番、心地よい場所で感情をくすぐる。 いつまでもその声を聞いていたくなる。 これがきっと、好きってことなんだろう。
手に、毛糸の柔らかい感触が触れた。 それでふと、我に返る。 「…あぁゴメン」 密が身をこわばらせている。都筑は苦笑いして身を離した。 急に強く抱きしめたからだろう、密はほっとした顔をした。 都筑は話題を変えた。 「これ、してみていい?」 マフラーを目の高さに掲げてみせる。 首に巻いてみていいか聞いたのだ。 「うん」 と、声は聞こえなかったけれど密が小さく頷いた。 その顔が嬉しそうに微笑んだのを見て、都筑も笑みがこぼれた。 「じゃあ、早速させてもらお♪」 首に、さっきと同じ柔らかい毛糸の感触。 毛糸に包まれた辺りだけ、冷たい風が止んだ。 「…あったかい」 たったそれだけなのに、すごく驚いた。 ただマフラーを巻いただけなのに、一瞬ですごく 暖かくなった。体の芯まで満たされたカンジだ。 都筑は素直に感動していた。 ただのマフラーだ。なのに、密にもらったものはこんなにも違う。 好きな人にもらったものは、こんなにも心が暖かくなるものなんだ。 …気持ちってすごい。 都筑は正直に、思ったままの感想を言った。 「…ありがとう密」 こんなに嬉しいなんて思わなかった−。 なんだか泣きたくなってきて、都筑はつい大きな声を出した。 「どう?似合う?」 大げさにポーズをとってみせる。 そうしたら密が、小さく手招きをした。 その手につられて密に近寄った都筑は、ぐいと 首に巻かれたマフラーを引かれた。 近すぎてドキドキする。つい、小声で尋ねた。 「なに?」 心臓の音まで聞こえそうだ。 顔が赤くなってないだろうか。 ぎこちなくないだろうか。 そんなウブな心配をよそに、密は小さく笑って言った。 「…曲がってる」 マフラーの位置を少しずらす指先が、すぐ近くになる。 息がかかりそうな場所に、密の笑い顔がある。 「あ、ありがと」 なんだかちょっと、肩透かしを食らった気分がしたけれど都筑は 笑って感謝した。今だってこれだけで十分ドキドキしてるのに、 早々急に、いろいろ発展するわけがない。 そして、気まずい気分を変えるように話題も変えた。 「なんだかあべこべになっちゃったね。ホントは今日は密の誕生日で、 俺が密にプレゼントしようとしてたのに」 こんなステキなものをもらっておいて今さら、 自分のプレゼントなんかチープすぎて渡せない−。 都筑が俯いた理由が分かったのだろう。密が小さく笑った。 「プレゼントなら、今もらうから平気だ」 「…え?」 密の言った意味が解らず、首を傾げた向こうに、 ちょうど反対側に首を傾けた密と、唇が重なった。
(ぎゃふ…限界です、まだ続く。でもその前に後楽園遊びに行って来まっす!)
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