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2004年07月09日(金) 参議院不要論

今回の参議院選挙、
私は棄権させていただくことにしたい。
理由は、参議院が不要であり、にもかかわらず参議院選挙が政権の帰趨に
影響を与えているという矛盾に対する、ささやかな抗議である。
1%でも投票率が低くなって、参議院不要論に拍車がかかることを期待したい。

「衆議院のカーボンコピー」と言われ、昔から参議院は無用の長物とされて来た。
特に自民党長期単独政権時代の参議院は、全く影が薄かった。

ところがその参議院、そして参議院選挙が俄に注目されたのは1989年、
あの「マドンナ・プーム」で土井・社会党大勝、自民党が歴史的惨敗を喫した時である。
この結果、時の宇野首相は退陣し、参議院の結果で総理が辞任した初めて事例となった。
また、この選挙以後、現在に至るまで自民党は参議院の単独過半数を失い続けている。

このように、一見、参議院選挙の持つ意味と価値が上がったかに見えるが、
しかし実は弊害の方が大きい。

まず、「参議院選挙敗北の引責で自民党の総理・総裁が辞任する」という奇妙な慣例を作ってしまったことだ。
89年の宇野に続き、98年にも橋本が辞任したことで、今回も劣勢が伝えられる小泉の進退が
選挙前から取り沙汰されている。
だが、昨年秋に総裁に再選され、しかも総選挙で勝利し首相としても再任された小泉が、
なぜ政権選択の選挙ではない参議院選挙の結果でその地位を左右されなければならないのだろうか。
これは必ずしも小泉個人を擁護するための理屈ではない。
「ニセモノの政権交替」は要らないということだ。

人気の落ちた総理・総裁のクビを挿げ替えることで、あたかも政権が替ったかのような錯覚を与え、
その実、自民党政権そのものは延々と続いて行くという光景を今まで何回見せられて来たことだろう。
そういう似非政権交替はもうたくさん、
必要なのは、本当に政権が交替することである。
従って、今回の結果がどうあれ、小泉が辞める必要は全くない。
小泉・・・というか、自公政権が今後善政を敷くならそれはそれでよいし、
悪政を重ねるなら次ぎの総選挙でこそ鉄槌を下して、政権から引き摺り降ろせばよい。
「政権選択と関係ないから自民党に御灸だけを据える選挙」などというわけのわからないものは、
百害あっても一利ないのである。

その「百害」として、衆議院と参議院での「ねじれ現象」が挙げられる。
それは89年の自民党敗北から以後続いている。
衆議院選挙、つまり「政権選択選挙」で信任を得ているのは与党なのに、
参議院では過半数割れが続き、政治のゴタゴタの温床になっている。
自民党が連立を余儀なくされたのもこの参議院過半数割れが原因である。
また、このことは政権交替そのものにも悪影響を及ぼしている。

例えば昨秋の衆議院選挙で民主党は「マニフェスト」を掲げて政権交替を訴えた。
ところが、その「マニフェスト」がカラ証文に終ることは、選挙前から明かだった。
なぜなら、もし衆議院選挙で民主党が過半数を取っても、参議院では過半数に及ばない。
そうなれば、例え政権を取っても参議院で反対されれば修正を迫られるので、
結局「マニフェスト」なぞひとつも実行できないことになるからである。
つまり、完全に政権交替を果すには、衆議院選挙と2度の参議院選挙、
計3回の選挙で勝たなければならないという、途方もない壁となって立ち塞がってしまった。
これは今後、どこが政権を取っても同じことだ。
政権安定を期すなら選挙で3連勝しなければならない。
だがそんなことは無理に決まっている。
政権2年も経てば、どんな政権でも国民に失望感を与えるに決まっているからである。
しかし参議院選挙の度に政権が不安定に陥っては、何ひとつ政策は実行できない。
参議院選挙をアメリカに倣って「中間選挙」と位置付ける学説があるが、これも誤りである。
4年の任期が完全に保証されている米大統領制と、参議院選挙で政治が変動する全く日本では、
事情が異なるのである。
にもかかわらず「衆議院優位」の憲法規程によって、どっちにしろ衆議院で過半数を占めた方の意思通りになる。
なのに、ただあたら政治のゴタゴタだけは続くのである。
まさに無駄で不要、その上有害無益な参議院である。

日本同様、議院内閣制を敷く他国で参議院=上院はどうなっているか。
例えばイギリスの上院は貴族院であり、事実上、ただの名誉職だ。
また、ドイツでは自動的に連邦各州の首相などが兼任する仕組みである。
政権のあり方を左右するにもかかわらず、
政権選択そのものの選挙ではないというわけのわからないあり方をしている日本は
実に奇妙である。

近い将来の憲法改正では、参議院を廃止するか、衆議院と合併するなど、
根本的改革を期待したい。
そのための積極的政治意思表示としてあえて、今回、棄権する次第である。


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