| 2001年10月20日(土) |
ワングリップスタイル |
題名通り、ワングリップで総てのショットをこなすプレ−スタイルである。 初めて硬式テニスをしたのは中学生くらいのことでそのときに使っていたのはウッドラケットである。 今では存在自体が骨董品だが当時はこのラケットが当たり前な時代だったのだ。 当然木製なのだから今の時代のグラファイトやケプラー、カーボンを使っていて軽くて丈夫でしかも飛びが良いラケットと比較するととにかく面が小さく飛ばない。 今でもミッドサイズのラケットは存在するがこのウッドラケット全盛時代には「レギュラー」なるサイズが存在した。 オーバーサイズのラケットしか知らない今の若者には信じられないであろう面の小ささである。 しかしこのラケットが僕の最初のラケットだった。 フォアハンドは分からないがバックハンドのスライスがとても気持ちよく感じたのをよく覚えている。 今ではすっかり忘れたがウッドラケットの独特の打球感は打ったものにしか分からない感覚がある。 今の若者達にはこの打球感を楽しむプレーヤはいないだろう。 時代はボールを打つ楽しみではなく、如何にラケットを使ってボールをコントロールし試合に勝つか、という点に傾向しているのではないだろうか。
僕のお気に入りのラケットはウィルソンのプロスタッフミッド、である。 今ではすでに旧式のラケットになってしまっているが、ネットオークションでは時々高額で出回ってくるような事があるほど、一度このラケットに魅せられたものはその魅力から逃れるのは難しくなってしまう時代の逸品である。
このラケットは今は引退してしまったが北欧の貴公子と呼ばれていたステファン・エドバーグが愛用していた。 今はサンプラスくらいだろう、こいつを使っているのは。 僕は当時硬式テニスに転向して2年目くらいで、ようやくストロークからボレーへと技術の上達をはかっている時代で、当然エドバーグをお手本にしていた。 彼のフォアハンドは「弱い!」の一言で片づけられる場合が多いが、僕はそのタッチ感覚やリズムの取り方も含め好きだった。 ある程度自信がついてきたときには「ボレーはエドバーグに負けるが、フォアは俺の方がうまい!」とうそぶいていたものだった。 ただし、このプレースタイルの弱点は遅いコートでハードトップスピナーに対して有効な攻撃力を持たないのが大きな問題で、厚ラケがテニス界を席巻しラケットのパワーを最大限に生かし、やたらと回転をかけてくるタイプのプレーヤーに対して繊細すぎる対応を要求した。 簡単に言うと高く弾むボールに対して力が入りにくく、スピンがかけにくいスタイルだったのだ。 こういったプレーヤーに対し、くそまじめにベースラインでチャンスを待ち、ネットで決める戦術はリスクが高かった。 楽しさの点で言えば楽しめないことはないが、僕個人の独特の考え方かもしれないのだが、プレースメントを大事にショットしている僕にとって、厚ラケでがんがんスピンをかけてくるプレーヤーに負けるのは許し難い感覚があった。 その後いろいろグリップを模索し、トップスピナーを試したり両手打ちを試したりしてみたが、結局分かったのは「フラットで速いボールが打てること」「ネットでもポイントがとれること」この二つは絶対にはずせない僕のテニスの基本であることが分かった。 そうして決まったスタイルがフォアハンドをイースタンからセミウエスタン位の厚さで握り、フラットでの攻撃力と高いボールに対しても打ち込めるスタイルがベースのオールラウンドプレーヤーを指向していった。 サービスもスピンサーブからフラットサーブに変え、サーブアンドボレーでポイントを取るスタイルから、サーブでポイントを取るか、その次のボールをフォアハンドで押し込みボレーで決めるというスタイルに変わっていった。 長い間このスタイルでやってきたが、エースでポイントを取りに行くスタイルを維持するには十分な練習量が必要だと思う。 最近は体力の低下もさることながら、フィジカルな点でも昔のようにうち切れなくなってきている現状も出てきている。 何よりもモチュベーションの低下から来る「決めてやる」「絶対勝つ」といった感情を自然と呼び起こす事が出来なくなっており、そう気持ちを持っていっても裏付けする自信、負けたときの苦痛が染みついていて最初からそういう気持ちを封印してしまう事も少なくない。 この状態で出来ることは第一に「ボールを打つ楽しさ」をまず素直に楽しむこと、ではないだろうか。 テニスを楽しむ前にセンターでボールをとらえる独特の感覚をまず確実なものとし、その次に如何に効果的にそのボールを使うかというスタンスで考えようと思う。 勝つために必要なショットを練習するのではなく、自分の打ちたいボールを打とうと思う。 より速く、より強く、より深く、より効果が高い、というものはしばらくお休みしましょう。 今は一球一球を大切に楽しんで打つことを心がけよう。 もう少し穏やかな感情を持ってボールと戯れることも必要だろう。
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