Espressoを飲みながら

2002年10月01日(火) アビニョンの記憶

 押し入れの中を覗いていた。いわゆるひとつの雑多な状態。

 フランスを旅行した時の写真が目に入った。
アビニョンの法皇庁だっけ。一人で関空を飛び立ち、
シンガポール航空でパリを目指して飛ぶと、なぜか私は高熱を
出してしまい、英語の表記とスペイン語から類推して文を読む
以外には言葉のわからないフランスに、頭がぼうっとした状態で
降り立ってしまったのであった。

ユーレイルパスとかいうヨーロッパ数カ国の列車の乗り放題
チケットをあらかじめ手に入れていたのは幸いであった。

なにしろただでさえ電車の切符を買うのはどちらかというと
苦手で、特に東京なんかに行った日には、目的の駅がどこに
あるのかすら探すのに一苦労。それから乗り換えがどこなのか、
何色の電車に乗ったらいいのか、分かりにくいことこの上ない。

フランスで、1からチケットの購入だの、時刻表の確認だのして
いたら、どこか知らない国に行ってしまいそうだ。
でも駅の数は(日本と比較すると)そんなに多くないから、
迷いはしないだろうけど。

 年月というのは残酷なもので、5年も経つと、あんなに楽しかった
はずの旅行ですら記憶の中でおぼろげなものとなっている。
物持ちが悪い私なので、記念の品とか日記とか写真の大半は、
すでにどこか遠いところに散逸してしまったようだ。

 結局のところ、空港からすぐ電車に乗ってパリを出て、
(なぜかパリには全く興味がなかった)アビニョンを目指したのだった。
過剰なまでに一極集中したパリと違って、アビニョンに行けば、
自分のイメージの中にある、「綺麗なフランスの街」というものに
出会えるのでは、と思っていた。実際、あの街は綺麗だった。
ただし、道中は高熱+耳のひどい痛みで、アビニョンでホテルを
見付けた時にはふらふら。Ibizaとかいうチェーンのホテルに泊まった。

かの街の法王庁は、信者ではない私の目にも美しく映った。
法王庁から街を見下ろして、近くや遠くに見える小さな家々。

雑踏。声。犬の鳴き声。オープンカフェから漂うハーブの香り。
ピザにやたらオリーブオイルがまったりと塗られていたのが
まだ印象に残っている。

私は、なんだか魔法にかけられたように、酩酊したように、
感じられる印象の全てを吸収しようとしていたのか。

9月下旬のアビニョン。


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空遊 [MAIL]

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