武ニュースDiary


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2015年07月04日(土) 「GQ台湾」6月号・1●更新

これも少しずつ。


金城武
スターであることには慣れません


城武の表紙を撮影できると聞いたとき、
編集部内部にさえ、ざわざわと興奮した空気が立ち込めた。
「太平輪」第一部は2014年末に大々的に公開されたが、
それは金城武のその前の映画「武侠(捜査官X)」からもう4年も後のことだ。
2009年より前、彼は年に少なくとも1本というリズムを保っていたが、
2009年の「赤壁(レッドクリフ)」以降は、2年置いてやっと「武侠」に出演、
その後は3年の空きがあってようやく「太平輪」だ。

その間は、彼の「世界が速くなるにつれ、心は遅くなる」と「I See You」のCMが
世の中を覆い尽くすように強力に放映されるのを見られただけだった。
だからこんなに長いこと人々の視線の中に存在しなかった者に対し、
登場してほしいと期待するのをみなとっくにやめ、
公の場への露出はサプライズプレゼントと思っている。
彼の神秘さと、それが引き起こす好奇心は、ずっと正比例してきた。
このような存在は、芸能界・映画界どこでもまれな生き物といっていい。
すべてが明るみにさらされるネット時代にあっては、なおのこと極めて得難いものだ。

「金城武」の3文字は伝説を思わせる。
彼が控えめになればなるほど、マスコミと人々は彼を愛する。
「GQ」は今回、彼とは東京で会った。
彼について、我々はいつだって好奇心でいっぱいだが、それを満足させられるだろうか?
金城武は我々よりずっと、この鬼ごっこ遊びに通じているのである。

取材中、彼は時にまじめに、時に重々しく、時に悪ふざけをしてその場を笑いに包んだ。
コントロールの芸術は、この42歳の青年の掌中にあることが、
時と共にどんどんはっきりしていったのだった。
(続く)


20:45 更新


紙撮影の場所は東京近郊の小さな衛星都市、福生市である。
出発前、グーグル・マップで場所を探し、距離を試算すると、
都心から3回電車を乗り換えて、およそ1時間で着く。
東京の人間でも、日本で3番目に小さいこの市のことを
聞いたことがない人が大部分なほどだ。

朝早く起き、電車を乗り継いで、撮影の場所まで少し歩く。
ハワイ風の昔のアメリカ式住宅だ。
前に1台のオレンジ色の古ぼけたビートルが停まっていた。
車の屋根に取り付けられたサーフキャリアは既に錆びていたが、
車庫にはまだサーフボードまであった。
家の中に入ると、歳月の跡がいっぱいの古い木の床がぎいぎいと鳴る。
室内の古い家具と食品雑貨を見ると、まるで映画で見た
50〜60年代のアメリカ中西部の田舎の村にいるようで、
ともすると、日本にいることを本当に忘れてしまう。

ての準備が整ったとき、外がちょっとざわざわして、金城武が数人に囲まれ入ってきた。
撮影当時はまだ冬のさなかの2月の東京である。
彼は簡単なダウンコートにチェックのシャツ、作業ズボンにスニーカーを履き、
小さなリュックを背負っていた。日本の路上でよく見かける若い男の子の格好だ。
どこから音がするのかというかのように彼は振り返り、さっとあたりを一瞥した。
目はきらきら光り、表情には今起きたばかりのようなものうさと
ハッとしたような感じがあった。
ヒゲはまだきれいに剃っていない。
我々が声をかけて挨拶するチャンスがないうちに、彼はメイクルームへと
連れられて入ってしまった。ここまで10秒もなかった。

アイドルスターが40歳を過ぎたある日

城武が人に与える印象は、野うさぎに似ている。
目がきらきらと、性質は静かで温和、だが警戒心が強い。
周知のことだが、彼は仕事をしていないときは、透明人間と同じだ。
あらゆる手を尽くしてひっそりと控えめにしているが、
職業と身分は彼が平凡でいることを許さない。
だから限られた環境の中で透明人間になるしかないのである。

目の前の金城武は居間のソファに腰掛け、どうぞお座りくださいと言う。
あるいは深々とソファーに沈み込むという方が適切だろう。
左手にタバコを持ち、我々に吸っていても構いませんかと聞いてから、
我々の椅子を近くに寄せさせ、煙がこちらに来ないようにした。

はいつだって侃々諤々やりたがる――金城武がまた老けた、
金城武のしわ、増えてない?
顔が崩れてない? 髪がまた少なくなったんでは?

このとき、我々の目の前の金城武はずっとタバコを吸っていた。
指の間でジリジリ燃えるにまかせ、たまに一口吸い込む。
ものは食べず、ブラックコーヒーを飲むだけだ。
彼のアシスタントがコーヒーを淹れる道具一式をいれたリュックをしょってきていた。
中には手挽きミル、ポット、ドリッパーなどが入っており、
今日の仕事の間中いつも新鮮なコーヒーが補給された。

老いということについて、金城武はホッと一息ついた。
あたかも長いあいだ待ち続けた出来事が起きたかのようだった。
「この『太平輪』には大学生を演じるシーンがあるんです。制服を着てね。
ぼくはそれで思ってました、どうやったらいいだろう? 
それらしく見えるだろうか? とても緊張しました」
(続く)


   BBS   ネタバレDiary 13:45


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