愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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2015年09月01日(火) 若真ネタ14

 前回から間が空きすぎて、あれなんですが…。若真が好きという方がいらっしゃったので、頑張って終わらそうという気になりました。始めたことは最後までちゃんと終わらせるべきと思いつつも、若真の需要がないなら、若真ネタやるより、日記書く方がいいかなって気もしていて、ちょっと日記を見にきてみたらよく分からんネタやってて残念…、ってなったら申し訳ないな、とか、いらんことを考えてたんです。好きにやったらいいのだろうし、誰も何も期待してないのは分かってるんですが、せっかくだから、自分だけじゃなくて、誰か他に一人でも面白がってくれる人がいたらいいな、って思っちゃうんですよね…。以下続き。
 11月になりました。けんちゃんちとの顔合わせの日程も決まった。
「なあ、その日、普段着でもいいの?」
 姉に聞いてみる。
「カジュアル過ぎないなら、きれいめの普段着でいいよ。でも、スーツにしたら? 大人だし。食事会の後、記念撮影するよ」
「スーツ持ってない」
「今後のために一着くらいあった方がいいよ。あ、成人式あるじゃん。私が買ってあげる」
「えっ。姉ちゃんが俺に何か買ってくれるとか。しかもスーツ。嘘だろ。ありえない」
「あんたねー。私、結婚して引っ越すし、そしたらあんまり会えなくなるし。まあ、プレゼントくらい、するよ。圭人にも服買ってあげよっと」
「引っ越すっても、すぐ近くだよな」
「まあね。でも、多分、4月に中国行くよ。海外赴任だよ。一年くらいで帰ってくるけどさ」
「…まじか」
「うん。ふふふ」
「何、その笑い」
「心配だけど、楽しみだよ。不安のが大きいけど、でも、大丈夫」
(姉ちゃん、変わったな)
 年が近くて、仲良かったり、ケンカしたり、顔も性格も似てる、って、昔からよく言われてた。似てるって言われると、イラッとするんだけど、ちょっとは嬉しかった。
(遠いな)
 中国って、遠いよな。というか、姉自体が遠い。高校時代はチャラチャラしてたのに、そんなのはもう過去のこと。若菜の前には、まだ若いが意外としっかりとした、結婚を控えた女がいる。遠い。姉だけじゃない。水泳を頑張ってる弟も。別れた彼女も。結婚した同級生も。いい大学に通ってる幼馴染みも。みんな変わっていく。自分だけが取り残されている気がする。
(なーんて)
 他愛もない感傷。でも、同じようなことを、十年後も考えてたりしたらどうしよう、とか思うと、ちょっと怖い。
(でも、まあ、それはそれで、)
 いいんじゃない? というか、それはもう、しょうがないっていうか。
 色んな店を回ってる余裕などないので、姉が下見してきて店を決め、若菜と弟を連れて、服を買いに行く。あ、髪も切りに行きました。
「圭ちゃん、かっこいい! 結人も意外と似合うよ!」
「意外とって」
「なんか照れるなー」
 そんなこんなで、11月下旬、顔合わせの日。駅の近くのホテルでランチです。若菜家は、家族全員五人で出席。今井(けんちゃんの姓)家は、けんちゃんと両親の三人。けんちゃんの両親は、若菜の両親よりかなり年上に見える。60歳は過ぎているだろう。若菜の父母は若くして結婚したから、まだ40ちょっとです。けんちゃんって一人っ子だったんだな、妹とかいそうなのに、と思っていたら、
「健三は三男で、上には兄が二人おります。長男とは色々ありまして、何年も前から一切連絡を取り合っていません。もう戻ってくることもないでしょうから、そちらにご迷惑をかけるようなことは決してありませんので、心配なさいませんよう。次男は、なんというか、子供のときから自由でして。大学を出てから、あちこちと旅をしながら、自活していました。年に一度くらいは帰ってきていましたが、何をやっているのか、どうやって生計を立てているのかも分からず…。それが、最近になって、こっちに戻って来たんです。でも、何やらバタバタしていて、今日の集まりのことも伝えてはいたんですが、忙しいから無理だと…。いや、本当にお恥ずかしいことです」
 とのことだった。今井家、色々あるんだな。けんちゃんの温厚そうな雰囲気から、何の問題もない穏やかな家庭を想像していたので、ちょっと驚いた。若菜がフリーターだと言ったところで、「まだまだ若いから、これから何でもできるね」と笑顔で返されただけだ。けんちゃんの兄の話が出たときは、少し気まずい空気になったものの、それからは和やかなムードで食事会は終了し、別の場所に移動して記念撮影してから、解散となった。帰り道、ご飯美味しかったね、とか、けんちゃんって三男だったんだね、とか、若菜家で会話。
「けんちゃんのお兄さんの話、あんた、知ってたの?」
 と母。
「うん、聞いてたよ」
「ちょっと心配だね」
「大丈夫。心配なんて、しだしたらキリないよ。お父さんとお母さんだって、結婚するとき、色々心配だったでしょ」
「そりゃそうだけどさ」
「妊娠が分かったとき、父さんも母さんも10代だったからなあ」
 父がしみじみと言った。
「父さんが、二十歳のときには、もう父親になってたんだな」
 若菜は言ってみて、ありえないな、と思った。別に悪い意味ではなく、単純に、想像もつかない。特に珍しい話でもないのだが、自分の身に置き換えてみると、ありえない、になるのだ。
「どうなることかと思ったけど、何とかなるもんだな」
「案ずるより産むが易し?」
 圭人が、ふと思い付いたように言った。
「合ってる?」
「合ってる合ってる。圭人は賢いねー」
 姉が笑った。いつもの豪快な笑い方ではなかった。控えめで、どこか寂しそうな感じだった。
「真奈美がいなくなると、寂しくなるね」
 母が言った。
「やめてよー。いなくなるとか。あ、結人はこの後バイト?」
 姉に聞かれ、うん、とだけ答える。
「頑張ってね」
「頑張ってるよ」
「知ってる」


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