愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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2015年06月24日(水) 若真ネタ4

 コンビニネタでは、真田視点になったり郭視点になったり色々でしたが、このネタでは、若菜視点のみで進めます(今更)。そしてまあまあ長丁場になりそうな気がしてきた。細切れなので。ちゃんと終わらせられるかな…。以下続き。

 そういや、乗せてもらったときは、コンビニで何か買って帰るのが習慣になってる。若菜のおごりです。車の中でコーヒー飲んだりね。
 言った通り10分で、真田が迎えに来た。雨は一旦止んでいた。
「おー、ありがと」
「雨止んでる。迎え必要なかったな」
「でもまた降るかもだし。一馬、今からちょっと時間ある?」
「あるよ」
「今日はコンビニじゃなくて、どっか店行かね? 夜カフェ的な。まあまあ近くなんだけど」
「うん、行く」
 若菜がナビして近くの店へ。コンクリート打ちっぱなしの四角い店で、なんか殺伐とした外観だな、って感じるんだけど、これがオシャレなのだろう、と思うことにする。狭い駐車場はいっぱいだったので、近くのコインパーキングに駐めて、店へ。
「こんなとこ、前からあったっけ」
「いや、結構新しいと思う」
「彼女と来たことあるのか?」
「いや、ない。牧がバイトしてる」
「そうなんだ。掛け持ち?」
「いや、うちの店は辞めたの」
 牧は、若菜のバイト仲間だった人。牧はコンビニネタにも出てたけど、脇役の使い回しです。若菜は牧と、最初はコンビニのバイトで一緒だった。若菜が居酒屋でもバイトしてると言ったら、コンビニは辞めて、若菜のいる居酒屋に来た。でも、そこも辞めて、新しくできたカフェに行った。転々としてるな。牧は真田と同じ大学の同学年で、学部は違うが面識はある。友達ではない。
 店に入ると、薄暗くて、殺風景で、よく分からんがオシャレげ。カップルや女子グループ向きっぽい。男二人じゃ入りづらい雰囲気が漂っていた。
「いらっしゃいませ。お、若菜! 真田と一緒に来てくれたんだ」
 出てきた店員は牧だった。真田は軽く会釈する。
「よー、おつかれ。こんなとこだったとはな。男同士で来るとこじゃねーな」
「そんなことないよ。男子グループも来るよ。それでは二名様、ご案内いたします。カウンター以外は全て個室となっております」
「長居しないしカウンターでいいわ」
「今ちょうど一つ空きがあるから個室にしたら?」
「いや、」
「俺はカウンターより個室がいい。落ち着くし」
 それまで黙っていた真田が言うと、牧は、そりゃそうだとばかりに頷く。
「だよね。じゃあ、こちらへ」
(まあいっか。どっちでも)
 若菜と真田は、牧に付いていく。外観から想像するより、中は広かった。部屋番号が書かれた個室が並んでいて、カラオケボックスみたいな造りだ。でも、コンクリート打ちっぱなしなので、無機質で冷たい感じがする。
「うちは、何タイプか個室があって選んでもらえるんだけど、今は一部屋しか空いてないからそこで」
「何タイプかって、大部屋と小部屋っていうんでなく?」
「それもあるけど、内装を変えてるんだ。リゾート風とか和風とかヨーロピアンとか。シンプルな部屋もかわいい部屋もあるよ」
「ふーん、ラブホみたい」
 牧が一つの部屋の前で立ち止まる。
「こちらです。どんなお部屋かは見てのお楽しみ」
(なんか…、なんか急に、個室が怖くなってきた。いや、怖いとか。なんで。車の中だって密室じゃん。何ともなかったぞ)
 個室を前に、何故かたじろぐ若菜。
「それでは、ごゆっくり」
(いや、だから長居しないってば。あっ、牧が、行ってしまう)
「入んないの?」
「入るけど」
 後ろにいる真田に言われ、若菜はやっとドアを開ける。ドアの向こうは、ガーリーな空間だった。淡いピンクの壁紙に、ピンクの花柄のソファー、カーペットもピンクで、アンティーク調の白いテーブル。それで、室内が店内よりさらに薄暗いもんだから、何か異様だった。部屋の外とのギャップが凄すぎる。
「何だこりゃ。姫に憧れる女子中高生の部屋か」
(ここしか空いてないからって通すか、普通。牧め…)
「まあ、いいんじゃないか。落ち着かないけど」
 真田は驚いていたものの、すぐに諦めた様子で、ソファーに腰掛けて、メニューを手に取る。
「座んないの?」
「座るけど」
 ソファーは一つなので、必然的に隣りに腰掛けることになる。不自然ではない程度に、でもなるべく間を空けて。
(こんな変な部屋でよかったかも。普通に雰囲気いい部屋だったりしたら、なんかドキドキするかも)
「はい」
 真田にメニューを渡され、ペラペラとめくる。
「おー、色々あんなー。何食う?」
 なんとなくもやもやする気持ちを振り払うように明るい声を出した。
「何か食べるのか? こんな時間に? 俺はコーヒーだけでいい」
「まじで? なんも食べないの? 俺、パフェ食べたい。あと、ポテトも」
「まじか。甘いもんと揚げもんとか。せめてどっちかにしろよ」
「じゃー、パフェのみ」
 室内にあるインターホンでオーダーする。
「なんか、この異空間、慣れてきた」
 若菜が言うと、真田は軽く首を傾げた。
「俺は慣れない。別にいいけど。ラブホにもこういう部屋あんの?」
「えっ」
「さっき牧に言ってただろ。ラブホみたいって」
「いや、俺もよく知らないけど、そういうホテルありそうじゃね? 色んな種類の部屋があるとこ。イメージだよ、イメージ」
「ふーん」
「あ、行ってみたい感じ? 一緒に行ってみる?」
 もちろん冗談だし、何言ってんだよ、って呆れられるとばかり思っていたら。真顔で、
「男同士でも入れるもんなのか?」
 と返してきた。
「そう言われてみると。どうだろ…」
「入れるとこと入れないとこがあるんじゃないかな」
「あー、うん、そーかも。ていうか」
「何?」
「何って。いや、何でもないけど」
 コンコン、と部屋をノックする音に続き、「ご注文の品、お持ちしました」の声。持ってきたのが牧だったら、文句の一つでも言ってやろうと思っていたが、女の子だった。とにかく、若菜はホッとする。これで変な方向に行ってしまった話が中断される。変な話になったのは、自分のせいだけどね。
「パフェうまー」
 ちなみにチョコレートパフェです。でかい。
「よく食うなあ」
「あ、そういや、姉ちゃん、結婚するんだ」
「えっ、そうなんだ。おめでとう」
「うん」
「相手の人、会ったことある?」
「昨夜、うち来た。姉ちゃんより4つ年上で、いい会社行ってて、真面目で優しそう」
「よかったじゃん」
「うん」
「式いつ?」
「さー。そこまでは」
「結人、スーツ着んのか。似合わなさそー」
「いやいや、そんなことねーだろ。何でも着こなしちゃうから」
「口の回りぐちゃぐちゃで言われてもな」
 真田はおしぼりで、若菜の口の回りをゴシゴシ拭った。
「いて。お前はもっと優しく拭けねーのか。ていうか自分で拭けますので!」
(あー、いかん、無駄にドキドキする)
「あっそう」
「でも、ありがと」
 照れ隠しでぶっきらぼうな言い方になってしまう。真田は驚いたように目を開き、その後、小さく声を出して笑った。
「なぜ笑う」
「結人、なんかちょっと、かわいいな」
「はーあ? なんかちょっと、とか、なめんなよ。めっちゃかわいいから俺!」
 姉が結婚する予定については話すが、彼女と別れた話はしないよ。


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