愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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翌朝。土曜日。若菜は今日は昼からコンビニ。夕方からは居酒屋のバイト。基本ギリギリまで寝てるが、早く寝たので10時に目が覚めた。11時半まで寝ても間に合うので二度寝しようかとも思ったが、全然眠くない。姉も弟も、出掛けた後だった。弟は友達と、姉は婚約者と。平日仕事の母は家にいる。父親も基本的には平日仕事だが、今日は出勤だ。 「あら、おはよう。今日は昼からじゃなかったっけ?」 「おはよー。うん、昼から」 「あんたにしては早起きじゃない」 若菜は遅い朝食。母親は、テレビを見ている。 「姉ちゃんは、ほんとに好きなのよ、今井さんのことが」 いやいや、条件がいいから結婚すんだろ。だって今までの男と全くタイプ違うじゃん。と若菜は思ったが、もう面倒になって、そうは言わず。 「そりゃ結構なことで」 「だって、結人、結婚って、生涯を共にするんだよ。どんなにお金があったって、それだけじゃ無理だよ。まあ、お金は必要だけどさ。でも、今はお金があったって、この先どうなるかは分かんないじゃない。今は健康でも、病気や事故をするかもしれないし。いいことも悪いことも、どうでもいいことも、いっぱい起こる。好きじゃなきゃ、好かれてなきゃ、一緒に居られないよ。真奈美は、今井さんとなら苦楽を共にして生きていける、生きていきたい、って思ったから、結婚を決めたんだよ」 (なんという一般論。けんちゃんとなら楽して生きてける、の間違いだろ。そんで、デキ婚の母さんが言っても説得力があんまりないし) 若菜、手厳しいです。 「そうなんだ。分かった」 「分かった、て、あんた…」 テレビで天気予報が流れていた。 「夜には雨になるって。カッパ持って行きなさいよ。一馬君を頼っちゃダメだよ」 「分かってる」 以前は、若菜から真田に「送迎よろしく」なんて頼んでいたのだが、母親に怒られたし、確かに悪いな、って気持ちになったので、自分からは「乗せてって」とは頼まなくなった。でも、真田からたまに、乗せていこうか、と言われることはある。そういうときは遠慮なく甘えてる。 「乗せてもらうなって言ってるわけじゃないよ。でも、頼むのは図々し過ぎるでしょ。あんたは免許ないから、今度はこっちが乗せてくとかできないんだし。それに、何かあったらどうすんの。ちゃんと運転してても、事故に巻き込まれることあるんだよ。それが結人の送迎中だったらどうするの。取り返しがつかないよ。だから、気軽に頼むもんじゃないんだよ。どうしてもってときは、私に言いなよ」 「分かってる」 あ、気が、虚ろになってく。ぼーっとする。母親の声が、どこか遠くで聞こえているような。 (今日もバイト。明日もバイト。明後日は、どうだっけ。まあどっちでもいいや。この先ずっとこうなのか。いつまで続けるんだろう。いつまで続けていけるんだろう。悲観してみても、楽観してみても、どうもピンとこなくて、他人事みたいだ) 「ほんとに分かってんの? ちゃんとお母さんの話聞いてる? なんか覇気ないなあ、結人」
コンビニのバイト行って、いつもなら一旦帰ってご飯食べてから居酒屋に行くが、なんか帰るのが面倒で、コンビニで適当に買って食べてから、居酒屋へ。予報通り、夜になって雨が降った。 バイト後、携帯を見ると、真田からLINEがきてた。 『今日バイト? 雨降ってるけど、迎えいる?』 若菜は真田に電話する。 「LINE見た。ありがと。原付きで来てるから乗って帰るわ。小雨だし。明日無いと困るし」 『明日コンビニ何時から?』 「9時」 『じゃあ朝、原付き取りに行けば。店まで乗せてくから』 「いや、そこまでしてもらうのも、なんか、」 『何それ。遠慮してんの? 珍しい。…あ、これから何か用があるのか?』 「いや、何もないけど」 『なら、いいだろ。今から出るから。10分で行く』 「わりーな」 『別にいい』
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