愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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夏休み明けテスト、真田はとてもいい成績だったよ。真田は夏休み中、バイトだけでなく勉強も頑張ったのだ。本当はE高よりも偏差値の高い高校に行きたかった。でも、自信がなくて諦めた。それをまあまあ悔いている。若菜と同じ高校なのは嬉しいんだけどね。大学受験はもうちょっと頑張るぞ、という気持ちでいる。高一の夏からそんなことを考えているなんて、真田は真面目で偉い子ですね。休みが終わったので、真田のシフトは変わります。土曜は日中、平日は週一か二で、学校が終わってから夜まで。平日は、入れ替わりのときに会ったことしかない人達と一緒に入るので、緊張してたんだけど、全然大丈夫でした。大人しそうな男子大学生と、フリータの若い女の子なんだけど、二人ともちゃんとしてるし、優しかった。 9月初めの土曜日、真田がもうすぐ上がる時間になって、ゆうパックを持ち込んで来たお客さんが…。 「あーっ、結人!」 「若菜くん、久しぶりー」 「Cさん、どうも! ゆうパックを一馬にやらせようと思ってな。昨日、近所の郵便局に持ち込もうとする親を引き止め、わざわざここに持って来てやったぞ、わっはっはっ」 (ゆうパックなんか、何回もやってるし…) でも、苦手な処理であるのは確かだ。若菜は単に、面倒だから嫌いなんだけど、真田にとっては、面倒というより、荷が重く感じられて、嫌いなのだ。それは、収納代行(支払いのこと)も同じだ。実際、本当に荷が重い。間違いがあったら大変だ。 迷いなくレジを操作して、ゆうパックを受け付ける真田の様子に、若菜は感心。 「なんだ、できるじゃん」 「できます」 「さて、なんか冷たいもんでも飲もうかな。店員さん、何がオススメ?」 「俺はアイスカフェラテが好きです」 「じゃあアイスカフェモカで!」 「お砂糖はお入れしますか?」 「お入れしないで。モカ美味しいよねー」 「決めてんならオススメ聞くなよ」 「アイスラテもちょーだい」 「シロップは? 持ち帰りの袋に入れるよな?」 「袋いらん。ラテはお前のだから、シロップは好きにして。奢りだから喜べ。もう時間とっくに過ぎてんじゃん。出てくるの待っとくから、近くで飲もうぜ」 「時間過ぎたの誰のせいだよ。ラテありがと!」 そんなわけで、バイト上がった真田と若菜は、近くの公園のベンチでマチカフェです。 「お前、普通にできてるな。安心したわ」 「心配してた?」 「するだろ、そりゃ。初日ひどかったもん」 「心配してた割には、今日初めて来たな」 「あ、すぐに来てほしかった? しょっちゅう来てほしかった? すまんすまん、夏期講習とかで忙しかったんだもん」 「来られたら迷惑だってことが、今日よく分かった」 「そういや、こないだ、お釣り、すっ飛ばしたらしいな」 「…! あれは、手が滑って…、って、何で知ってんの!?」 「英士から聞いた」 「誰だよ」 「前も言ったけど、同じマンションの奴。お前が転がしたお釣り拾ったの、そいつ」 「D高の?」 「そうそう」 まさか…そんな…。 って、真田は思ったけど、まあ、そりゃそうだよね、郭だよね、お約束。むしろ、これで郭じゃなかったら、それこそ、まさかそんな、だよ。 「F病院の道案内の話も聞いた?」 「あー、お前、道説明出来なくて、テンパってたんだろ」 「テンパってはいない。困ってたんだ」 「まあとにかく、お前は心配されてたぞ? あいつは大丈夫なのかと」 (大丈夫なのか、とか心配されてたんだ…。まあ、そうだろうけど…) 「ここからD高近いからな。たまに寄るんだよ、英士。俺がバイトしてたときも来てたわ。冷たい奴だから、俺がレジにいても、隣のレジで払って出て行くんだぜ。どう思う? 労いの言葉くらいかけろって」 道を教えてくれ、お釣りを拾ってくれた「あの人」と、結人の言う「えいし」が繋がらず、真田はなんだか混乱してしまう。 ところで、郭は、真田が若菜の友達で、バイトの後任だって、知ってました。若菜から聞いてたので。それで、真田の様子を見て、「大丈夫なのか?」と普通に心配になっていた。 「結人、俺、道を聞かれて、上手く答えられなくて、そしたら、お客さんがすごく不安そうで、困ってて、で、どうしようって。そしたら、あの人…、結人の友達が、」 「英士」 「うん、その人が、助けてくれて、俺、大げさだけど、神様…、みたいに見えたんだ」 「大げさだろ」 「そうなんだけど」 「俺だって、知ってたら道くらい教えるぞ。地図までは描かねーが」 地図を迷いなく描く、その様子が、遠目だったのに鮮やかに思い出される。心に深く残ってる。地図を描いてるのを、間近で見たかった。とか、そんなんだから、タバコ取り間違えるし。お釣り転がすし。 「紹介して下さいとか言っちゃう感じ?」 若菜がにやにや笑ってる。 「…ううん、言わない感じ」 だって、わざわざ紹介してもらって、会って、何を話す? お礼を言いたいけど、それ以外に何を? 何もない。格好悪いとこばかり見られてますが、俺は普段は結構ちゃんとしてます、とか、言い訳でもするのか。自分はコンビニのバイトで、あの人は客で、このバイトは大丈夫かって思われてる。若菜という共通の友人がいるけど、若菜に繋いでもらうのは、何か違う気がしてる。 「ふーん、まあいいわ。また店行くし。俺も、英士も」 ちなみに、若菜の夏休み明けテストは、散々でした。夏期講習行ったのに。夏期講習では、いい出会いがあったようだよ。若菜は、今後も塾に通うことにしました。
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