愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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続き。 あの人(道教えてあげたD高生な。実際D高かどうか分からんけど、真田はほぼ確信してる)にまた会えないかな、とか思ってるうちに、夏休みもそろそろ終わりです。真田は、高一の8/31をバイト先で迎えている。宿題は計画的に終わらせたし、夏休み明けテスト対策も一応できてる。毎年夏休みには家族で旅行に行くことになっていて、今年も行ったが、既に記憶がおぼろげだ。家族の恒例行事になっているし、両親が乗り気なので、自分も楽しそうにしているが、そんなに楽しいとは感じていなかった。でもこの夏は、割といい夏だった。初めてのバイト、無理って思ったけど、そんな無理でもなかった。そのことが、こんなに嬉しいなんて。夏休みが終わる。9月以降はシフトが変わる。まだまだ暑いけど、夏は終わりに近付いてる。そんな真田の思いなどに関係なく、店はいつも通り、昼時のピークを迎えようとしていた。真田は、レジをしながら、「ちょっとだけなら結人の気持ちが分かるかも」と思った。忙しいと快感、というの。早くしなければならない。間違えてはならない。そして自分は、なんとかそれをやれるだろうという見込み。 (あっ、あの人…!) 隣のレジに、あの人がいるのが見えた。こないだ、道を教えてくれた学生だ。こっちのレジに来てくれたらよかったのに、という真田の思いも虚しく、学生は会計を終えそうだ。隣のレジを気にしているせいで、手元が疎かになってしまった真田は、釣り銭を渡そうとしたときに、客とタイミングが合わず、十円玉が、客の手からすり抜け、台の上を転がり、床に落ちて、出入り口方向に向かって転がり続ける。 「あっ…!」 真田は慌てて、レジから出ようとする。客も硬貨を追いかけようとする。十円玉は、隣のレジで会計を終え、店を出ようとしていた学生の足元へ。彼は、屈んで硬貨を拾い、すぐ近くまで来ていた客に渡した。「あ、どうも」、と客が受け取る。「申し訳ありません!」という、真田の謝罪が聞こえていたかどうかも分からないまま、真田が対応していた客も、学生も、何事もなかったようにすっと店を出て行った。ああ、もう…、なんて落ち込む間もなく、次の客に対応する。 十円玉が、真田の代わりに、あの人を追いかけてった? でも、引き止められたのは一瞬だけ。 もうすぐバイトが上がる時間。客は少なく、店内は静かだった。Cさんは、のんびりしたペースで品出ししている。 Bさんが、発注しながら、真田に話しかけてきた。 「9月からは、シフト変わるね。真田くん、土曜と、平日入れる日は夕方からでしょう? 私は、平日は夕方までだし、土曜はこれからはあんまり入らないつもりなの。どうしても人がいないときは入るけどね。これからも、頑張ってね。でも、無理はしないように。新しい人も入るみたいだから、シフトが一緒になったら、色々教えてあげてね」 色々教えてあげてって言われても、真田はまだ入って一ヶ月ちょっと。まだまだBさんに色々教えてほしいことがあるのに。Cさんから少し聞いた話では、Bさんの親の調子が悪いらしく、今後はなるべくシフトを減らしていくつもりらしい。Bさんがあんまり出られなくなったら、この店はどうなるんだろう。自分は、誰を見本にすればいいんだろう。真田の不安が伝わったのか、 「真田くんなら大丈夫」 と、Bさんは微笑んだ。 (なんで…) たった一ヶ月ちょっとの間、といっても毎日ではなく、週三で一緒にシフトに入っていた人が、自分を認め、励ましてくれる。それが社交辞令でも、尊敬しているBさんから言われて、真田は嬉しかった。でも、なんとなくしんみりしてしまう。 (Bさんのお父さんかお母さんか分からないけど、早く元気になるといいな…) それで真田は、若菜に感謝しようと思った。もし若菜に頼まれなかったら、コンビニのバイトなんて絶対しなかった。しんどいこともあるけど、始めてよかった。 (あの人…) そう、あの人。道を教えてくれて、お釣りを拾ってくれたあの人。またお礼を言えなかった。 でも、また会える気がしてた。次は、慌てたりミスしたりしてる場面じゃなく、普通にレジで相対したい。
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