愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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2012年11月23日(金) msdですよ

 今日は紅葉を見に行ってきたよ。紅葉きれいー。それはそれとして、msdの続き(はいはい)
 PはOに、前回の日記に書いたような自分の生い立ちを、何でもないことのように語る。そしたらOは、
「何も、おばあちゃんの言うとおりにしなくても、進路は自分で決めたらいいと思うけど」
「そうそう、それ正しい。俺には俺の希望ってもんが一応はあるんだけど、ばあちゃんの希望と一致してたらラッキーで、もし一致してないなら、俺はばあちゃんの希望を優先したい。それが俺の一番の希望なんだよね。だから、つまり、俺が望んでやってることだから、それでよし」
「なんかすっきりしないけど…」
「そう?」
「自由じゃない感じ」
「自由な人とかこの世にいるの」
「俺は割りと自由かな」
「そりゃ結構」
 Pはちょっとだけ笑った。もう駅だ。Pは軽く手を上げ、「じゃあまた明日」と言って駅に入って行った。
 両親がいなくて、正しいけど厳しいおばあちゃん一人に育てられる、って一体どんな感じなんだろう。Oには全然想像つかなくて、それなのに、Pに偉そうなこと(自分で決めたらいいとか、自由じゃないとか)言っちゃったことが、急に間違ってたように感じられてきて、悲しくなる。Pに、「お前に何が分かるんだよ」って言われても不思議はなかったんじゃないか。でも、少しも気分を害したようではなかった。むしろ、笑ってた。そのことがますますOを悲しくさせた。
 FがOの家に寄ったときに、Pについての話をFに聞いてもらう。Oは、学校であったことを全部Fに話すから。Fのことも全部知りたいので、なんか面白いこととか面白くないこととかあった? て聞くんだけど、Fは大体「特にはないかな」って答える。それで、Oはやや不満なんだけど。
「どう思う?」
 真顔でOに聞かれて、Fは困惑する。
「どう思うって、何が?」
「だから、Pのこと」
 どう思うも何も。そもそも、こんなプライベートな話、他人に漏らさないほうがいいんじゃないかな、などとFは思いながら、
「分からないよ」
 とだけ答える。Oはがっかりしたようにため息をついた。Fは、Oから聞くより前に、Pの名前だけは知っていた。同じクラスで一緒に学級委員をやってるEから、3組に幼馴染みのPって男子がいる、って聞いていたから。でFは、3組ってOのクラスじゃないか、と思って覚えていた。
「Pのために俺ができることって、何かあるだろうか」
 Oの言葉に、Fはどきりとする。
「PはOに、何かしてほしそう?」
「いや、全然。ただ、俺が何かしたいだけなんだと思う。でも、何ができるのか分からない」
「Pを自由にしてあげたいってこと?」
 Pがそれを望んでいるかいないのかも分からないのに?
「そうなのかな。そうなのかもしれない」
 Oは俯いた。自由にしてあげたい、だと。なんて傲慢なんだ。
「そんなことができるのかな」
「分かんない」
(O、君は、Pにとって何者かでありたいと願ってしまっている。Pの重要な誰かになりたいと。そのためにどうしたらいいのかを、俺に聞くのか)
「俺にも分からない。でも、Oはきっと、Pのために、何かはしてあげられると思う」
 Oはゆっくり顔を上げ、澄んだ瞳でFを見つめた。
(OはPを好きになってしまったんだ。なら、俺はそれを見守ろう。見守ることしかできないじゃないか。OがPに、何かしてあげられますように。そしてPが、それを受け入れますように。
 Oの恋が、幸せでありますように)


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