愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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2004年05月18日(火) 進藤ちゃん、恋に溺れるの巻き(三)

 タテしん大学生ネタが一段落着いたら、MAJIMEに笛に向かい合いたい心地だぜ。いや、最近何度か向かい合ってはいたんですが、一行打っては二行消し(※それは無理)で、もー全く進まん。ネタってあたためすぎると腐っちゃうんですね(素)いや、あたためてたわけじゃなく、ただそっとしておいただけですが。書こう書こうと思いつつも二年以上そっとしているあれこれがありますが…。それにしても郭が掴めない。難しい! 愛ゆえに。

 昨日のつづき↓

 進藤ちゃんはバイトに行きます。なんだかぼんやりしてしまって、仕事に身が入らないのだけど、一緒に入ってる店長(40代前半の男)もぼんやりしてるので、別に怒られたりとかはしないっていうか、店長は進藤ちゃんがぼんやりしていることにすら気付いてません。
「あ〜客が少ないー」
「そうですね」
「今日はすごく天気いいし、進藤君、散歩とかしてきてもいいよ、別に。俺はレジで寝てるから」
「そんな…」
「進藤君って彼女とかいるの?」(ものすごく唐突)
「え! い、いません。じゃなくて、あー、いや、います? はい、いますいます」
 彼女じゃないけど。「彼女とか」の「とか」の中には入るかもしれない。
「(微妙な間)…へ〜〜〜」
「なんですか、その反応は…」
「いや、別に。うらやましいなーと思って。同じ学校の子?」
「いや、別の学校」
「どうやって知り合ったの。合コン?」
 進藤ちゃんは「そういうんじゃなくて」と否定しかけるが、ほんとのことを言うわけにもいかないのだから、と考え直し、「まあそんなかんじです」と答える。
「その子かわいい? 芸能人でいったら誰っぽい感じ?」
 店長は、別に人の恋愛ごとに興味津々というわけでもなんでもなくて、暇なのでなんとなく色々聞いてみてるだけです。
「…えー…」
 返答に困っていると、自動ドアが開く音がして、進藤ちゃんはほっとする。のも束の間、入ってきた客はタテでした。
「いらっしゃいませー!」
 いつもはどこか間延びした口調で話す店長だが、挨拶のときだけははっきりしている。
 今そこにいる客が、ついさっきまで話題にしてた「彼女とか」だと店長に言ったら、どういう反応が返ってくるだろうか。
(案外、別に驚かなかったりして。「へ〜〜〜」って普通に返されたりして…)
「あら〜、こんなところに進藤ちゃんが…」
「白々しいよ、お前」
「わっははー、おつかれさまでーす」
「何しに来たんだよ」
「うわ、なに、その態度(笑) お客様に向かってー。今から図書館行くつもりなんですけどね、なんか急に喉が渇いてきちゃったので、ちょっとジュース買いに来てみただけでーす」
「そのへんの自販機で買えよ」
「そんなこと言っていいんですか〜? あの、いいんですかね?」(店長に話を振る)
「へ?」(店長は話を聞いてませんでした)
 で、タテはほんとにジュースだけを買ってあっさり去って行きました。
(ほんと何しに来たんだ、あいつ…)
 図書館とは全然方向が違うのに。
 って、顔を見たかったのに決まっている。そんなの、進藤ちゃんだって分かってる。でも、なんだか気恥ずかしくて、素っ気無くしてしまったのです。進藤ちゃんはとても後悔する。
 で、進藤ちゃんは、お昼の休憩時間(バックルームにて)、タテに電話する。タテは図書館の中にいるので出れなかったんだけど、数分後に外から掛け直してくる。急いで外に出たのだろう、電話のタテは少し息切れしていて、進藤ちゃんは胸がいっぱいになる。
「立松、せっかく来てくれたのにごめんな。態度悪くて。なんか照れ臭かったっていうか」
『えー、そんなの全然気にしてないのにー』
「うん、でも、ごめん」
『や、ていうか、そんな、うん、えーと…』
「ていうか勉強の邪魔してごめん」
『いやいや、全然、別にそんな根詰めてやってるわけじゃないっていうか勉強っていうほどの勉強でもないんですよ、うん、まじで』
「……」
『えー、も〜進藤ちゃ〜ん、やだー、どうしちゃったのよー』
「立松」
『はい』
「会いたいよ」
 さっき会った。
「キスしたい」
 今朝した。
『………』
 携帯電話の向こう、タテが息を詰めるのが分かった。
「うそ。ごめん。バカでございました」
 進藤ちゃんはタテの口調を真似て誤魔化す。声が震えてる。
『今、休憩時間?』
「えっ、あ、うん」
『何時まで?』
「一時半までだけど…」
『じゃああと20分もあるから全然だいじょぶだね』
 えっ、と進藤ちゃんが声を上げる前に電話は切られてしまう。
(立松の奴、来る気かよ)
 進藤ちゃんは、もう一回電話を掛けるんだけどタテは出ないし、「来なくていいよ」ってメールもするんだけど返事はない。おいおい、と思っているうちに休憩時間は残り5分となる。
 ドンドン、とバックルームのドアが強く叩かれ、進藤ちゃんの心臓は一瞬止まりそうになった。慌ててドアを開けると、そこにはタテが。
「おい、たてま、」
 つ、
 まで言えなかった。
 タテは大きく一歩踏み込んで中に入り、後ろ手にドアを閉める。ドアが閉まったのと、抱き寄せられて唇が合わさったのは同時だった。
 触れ合ったのは一瞬だけ。タテはすぐに離れ、やはり後ろ手にドアを開けて、ぴょんと飛んで後ろに下がって外に出る。
「部外者が入っちゃダメだよな〜。でも五秒程度だからオッケーだよね☆!」
 タテはいとも清々しい笑顔。進藤ちゃんは呆然としてる。
「というわけで、戻ります」
「えっ」
「じゃーね、進藤ちゃん、バイトがんばってね!」
 そしてタテはほんとにそれだけで去って行ってしまいます。チャリに乗って走り出す前、投げキッスを寄越してきたけれど、進藤ちゃんには突っ込むこともできませんでした。
 タテの姿がどんどん小さくなって行って、やがて見えなくなった頃、進藤ちゃんはおぼろげな手付きでドアを閉める。進藤ちゃんは閉められたドアの前に立ち尽くしたまま、しばらく止まってる。
 そっと胸に手を当ててみる。
 いたた。
 あー、もー、おい、咲くなよ。おちつけ。いいかげんにしとけ。
 胸ん中、限度知らずにガンガン花開いちゃうもんだから、苦しいったらない。むせ返る。
「おーい、進藤君ってばー」
 店長の声で、進藤ちゃんはやっと我に返る。
「あ、はい」
「さっきから何度も呼んでるのに気付かないし…(笑)」
「す、すみません」
「休憩時間過ぎてるよ」
「えっ! うわ、すみません!」
「あー、いや、別にいいんだけど。大丈夫?」
「すみません…」

(大丈夫?
 それは俺が俺に訊きたい)
 


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