愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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| 2004年05月17日(月) |
進藤ちゃん、恋に溺れるの巻き(二) |
きっと昨日の続きですよ。色々省略してますけど。いちおー続き。 翌朝、進藤ちゃんは早い時間に目覚める。隣りで眠っていたはずのタテがいないことに気付き、動揺する。部屋中を探したんだけど、いなくて、玄関を見ると、タテのスニーカーがない。どこに行ったんだろう。もしかして出ていったとか? 元旦や去年の誕生日のことを思い出して、一瞬背筋が寒くなるが、それはない、という確信はある。そこで進藤ちゃんは、今日が4月1日であることに気付く。 (エイプリルフールだ。もしかしたら、あいつ、俺を驚かそうとして…) 冗談にしては性質が悪く、タテらしくない。 なにか用事があってちょっと外出してるだけかもしれない。そう考えるほうが自然だ。でも、どうにも不安で、息苦しい。 色々考えて滅入るのも馬鹿馬鹿しいから、とりあえずもう一回寝直すか…、と思いながらも、進藤ちゃんは玄関にしゃがみこむ。一度座り込んでしまうと、一気に足元が覚束なくなって、立ち上がることができなかった。 それから間も無くして、タテが戻ってくる。手には茶色い紙袋を抱えている。あたたかい美味しそうなパンの匂いが玄関を満たす。タテは、エイプリルフールだからって進藤ちゃんを騙そうとしたわけでも、出てったわけでもなく、朝目が覚めて食パンがもうないことに気付いたので近くのパン屋に買いに行ってただけでした。 「わ〜、やっだー、進藤ちゃんてばこんなとこで何してんのー!」 タテは朝っぱらから相変わらずのテンションだ。こんなとこで何してんの、て。一体、誰のせいで、こんな。進藤ちゃんの胸は詰まる。タテが戻って来て、うれしくて。戻って来るのは当然だ。ちょっとパン買いに行ってただけなんだから。出て行くはずなんてない。エイプリルフールだからって自分を不安にさせるような嘘を吐くはずもない。そんなこと分かりきっている。だから戻って来るのは当然なのだ。なのに、心に、どっと込み上げてくるものがある。 「…何してんのって…、靴磨きだよ…」 「うっそ。タテノリがいなくなってたから心配して探しに行こうとしてたんでしょ〜」 探しに行こうとはしてない。できなかった。玄関に座り込んでしまって、どうすることもできなかった。 「まあお前には前科があるから、そりゃちょっとは心配するだろ」 無理矢理冗談ぽい口調で進藤ちゃんが言うと、タテは「痛いとこ突いてきますね〜」と苦笑い。 「パン、すごいいい匂い」 「焼きたてだからね〜。食パンしか買うつもりなかったのに、フランスパンも買っちゃったよ。あとねー、レーズンが入ってるやつも」 「レーズンはあんまり好きじゃない」 「だから、それは俺用。進藤ちゃんにはチョココロネ〜♪」 進藤ちゃんはそろそろ立ち上がろうとするんだけど、どうにも足に力が入らなくて立てない。 「進藤ちゃん、どったの?」 「あー、いや、別に」 「靴磨きは後にして、朝ご飯にしましょーよ〜(笑)」 タテは進藤ちゃんに手を差し伸べる。進藤ちゃんは少しためらった後、タテの手を取る。嘘みたいにあっさり立ち上がることができた。すぐ目の前でタテは不思議そうに小首を傾げるが、その後くしゃっと笑顔になる。大丈夫かよー? と笑いながら訊いてくる。 (大丈夫、じゃないのかもしれない) あー…、込み上げる。心のたがが外れて中身がどろどろ溢れ出す。 春のせい? 胸の中に咲いてる花、たった一つだけだったはずでしょう。なのに、たくさん、次々咲いてゆく、狂ったように。 進藤ちゃんは掴んでいるタテの手を強く引っ張って引き寄せて、タテに口付ける。驚いたタテはパンの袋を落としてしまう。進藤ちゃんは、短いキスの後、タテの首に腕を回して抱きついたままで止まってる。タテは驚きつつも、進藤ちゃんの腰に手を回す。 「立松はパンの匂いがする」(タテの肩口に顔を押し付けながら) 「…や、立松からパンの匂いがしてるんじゃなくてー、下に落としちゃったパンの入った袋からパンの匂いがしてるんだと思いますよ、うん」 進藤ちゃんはぱっとタテから離れ、落とすなよなー、と言いながら、屈んでパンの袋を拾う。 「進藤ちゃん、耳まで真っ赤ですが…」 とか言ってるタテの耳も真っ赤ですが。
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