日記

2004年05月09日(日) 【夢かマボロシ】

ハイ。再び創作小説の世界です。
もう、甘甘でごめーん。て感じか。笑 私の中の少女性が!笑 いや乙女な部分が炸裂?(笑 自分で言うな。)
ご意見ご感想など聞かせていただけたらうれしい限り。
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【夢かマボロシ】
2〜3日前から、家に男が住みついている。
中学の頃の同級生で、ショウという名前だ。
私は、宮本さつきと言う。短大を卒業して、事務系の仕事で会社に勤めはじめて、もう2年になる。
中学校なんて、卒業して、もう何年になるって言うんだろう?
年齢が22歳になったということは、卒業して、もう7年か。
(・・・どうしてショウは、私を覚えていたんだろう?)
心の中の問いに答える声は、今のところない。


そう。つい2〜3日前のある夜中。
会社がらみの飲み会があり、かなり酔っ払っていた私は、家へと帰る曲がり角を一本間違った。
あれは自分でも不思議だ。
就職して、一人暮らしをはじめて2年。
毎日毎晩通っている道を、そりゃあ酔ってたとは言え、なんで間違ったりしたのか?私?

「・・・あら?」
(見覚えのない道に入ってしまった。)
そう思って、あの夜、くるりと方向転換し、もと来た道を戻ろうとした時に。
うしろから声をかけられた。
「さつき」
夜。暗闇の中、突然背後から男の声で名前を呼ばれる、ということを想像してみていただけるだろうか。
勿論、私は飛び上がらんばかりに驚いた。
びくびくしながら振り返ると。
5メートル先の電柱にもたれるようにして、街灯に照らされて立っていたその顔に・・・
私はたしかに見覚えがあった、のだ。
「・・・あんた。・・・北村ショウ? 東2中でいっしょのクラスだった?」
私の声に。
彼はなぜか一瞬、ものすごく驚いた顔をした。
街灯のぼんやりした白い光に照らされて、暗がりだったけれど。なんだか不思議な程、驚いているように見えたのだ。
そして、しばらくの沈黙。
「・・・違うんだったらごめんナサイ。じゃ!」
夜ということも、人気がないということもあり、あっさり去って行こうとした私に、あわてた調子で彼は。
「あ、ちがわない。オレオレ! すげえな、なんでオマエ、覚えてんの?」
そう言いながら駆け寄ってきた。横目で見ると、にこにこして。邪気のない笑顔でそこにいる。
昔とあんまり・・・と言うか、全然変わらない感じだ。
中学3年。同じクラスだったよなあ、と思い出す。
結構突っぱってて。不良とか言われるグループにいて、目つきも鋭かった。
でも笑った顔が無邪気でかわいく、女子の中にも、かくれファンが多かったように記憶している。
「なんでって、・・・そういうあんたこそ、なんで覚えてんの?」
「えー? オレはさつきのことが好きだったからー」
「ハア?」
酔っていたせいもあり、私は笑いながら受け流した。
「ハイハイ、久しぶりに会ったからってそんなこと言わなくていいですからー。
・・・で、あんなとこで何してたの?」
「いや、友達のところに行った帰り。オマエは今、なに? 家に帰ってる途中?」
「そうでーす」
なんだか陽気な気分で、半分笑いながら歩いていた・・・ところまでは覚えてる。
しかしその後記憶は途切れ、目が覚めたら。
私は自分のアパートの部屋にいて、気がつけば朝。そして私の隣で、ショウがすやすやと安らかに、眠っていたのだ・・・。

「なっ・・・なっ、なにしてるのよー!」
「ん〜〜るせーな〜・・・あー、さつき。・・・おはようー」寝ぼけた顔で声でショウは言った。
「おはようーじゃない! なんであんた、私のベッドで寝てんのよー!」
気が動転して叫ぶ私に、彼はうるさそうに眉をしかめる。
「なに言ってんの・・・。そっちから誘ったくせにー」
(ハイー?)
その台詞で余計に動揺する私。だってそんなこと、ぜんぜん、まったく覚えてないんですが。
「そんなわけあるかー! 大体、なんでアンタ私のパジャマ着てんのよー!」
「貸してって言ったら貸してくれたくせに・・・」
・・・それすら覚えてない・・・。て言うか、ほんとか?それは。一体本当のことなのか?
「でも意味深だよね。なんで男物フリーサイズのパジャマなんか、一人暮らしの女の子の家に置いてあんのさ?」
やっと目が覚めてきたのか、ベッドに寝転んだままで頬杖ついて、ニヤニヤ笑ってそう聞いてくる。
「それは大きいから気持ちよくて私用に!ってそんなの関係ないでしょー!」
不機嫌にベッドから降りた私に、ショウは呑気に声をかけてくる。
「で、昨日、オレとさつきの間で、しばらくオレをこの家に置いてくれる、っていう契約が成立したんだけど。それも忘れちゃった?」
ニヤニヤ笑いやがって。
私はそれを聞いて、呆然としたまま、ショウのことを見返している。
「・・・なに? その契約とは」
「いや〜、オレが親とケンカしてしばらく友達のところに世話になってるって言ったらさ、酔ったさつきサンが、じゃあしばらく家に泊まってていいよーと」
「それはウソでしょう」
妙に冷静に私が言った。
「ほんとだよ?」
面白そうに、きらきら光る目をしてショウが言った。
「ウソだあ〜。どっちにしても、私覚えてないから無効ってことで」
「えーオレは覚えてるから有効ってことで」
「なにそれ!」
「・・・オレといるのイヤ?」
笑いを含んだ視線でそう聞いてくる。
悔しいことに。
そんなにイヤとも思っていない私がいるのだ。どうしたことだ。
呆然としたまま、私は言った。
「・・・今、頭働いてないから、あさごはん食べてから考える・・・」
「どうぞー」
私は力なく、コーヒーを淹れ、パンを焼く。
あ、オレもコーヒー、ブラックでくださーい。と、呑気なショウの声が背後で響いた。
こんなことって・・・あるんだろうか?


結局その日は平日で、私はなしくずしに、そのまま仕事に行くことになってしまった。
そしてそのまま、夜。
家に帰ると灯がついていて、やっぱりと言うべきなのか・・・ショウは私の部屋にいた。
「・・・ただいま・・・」
なんとなく力なく、私が言うと、「おっかえり〜」と楽しそうに返してくる。
あんまり楽しそうにそう言うから、なんとしてもこいつを追い出す!なんて気持ちにならないのが不思議だ。
毒気を抜かれるって言うか。やる気なくすって言うか。一人暮らしでよかったと言うか。
別に中学のときに、ショウのことを特別好きだったってことでもないんだけどな。
好感を持っていた、くらいで。
・・・と。
「いい匂い」
「あ、適当に晩メシ作っといたぜー」
ほかほかごはん。味噌汁。卵焼き。部屋の真ん中に置いた小さいテーブルの上に、きちんと並べられていた。
「すっごいね。なんか感動―」
「えーフツウだろ」
(いや、私あんまりしないし。)などと思うのは心の声だ。
・・・と、にやにや笑ってヤツは言った。
「しないって?いつも?」
「うーるさいな!」
くすくす笑う。
荷物を置いて手を洗い、一口食べてみるとかなり美味しい。
「感想は?」ニヤニヤ笑っているショウに、私は小声で「お見事です」と言った。


そして私たちの奇妙な同居生活がはじまった。
不思議と、私はぜんぜんそれがイヤじゃなかった。
イヤじゃなかった、だけじゃなく、この押しかけ同居人のことを、私はだんだん好きになってしまったから不思議だ。
中学校の同級生だからとか、むかし好感を持っていたから、という理由だけではなくて。
それはとても不思議な感じだった。
会うのは、朝と、私が仕事から帰ってきた後、夜9時以降。
彼は猫みたいに家にいて、気ままに出たり入ったりしているようだった。
そして私がいやがることは基本的にしなかった。
口論することも特になかった。大体において、彼の呑気な、あっけらかんとした返答に私が毒気を抜かれてしまい、それ以上言う気が失せるというパターンの繰り返しだったが。
そして、そんなの有りか?と真剣に思うが、最初の日は同じベッドで寝ていたけれど、翌日からショウはクッションを枕に床で寝ていて、私に触ったりすることもあんまりなかった。
一体? と思いながらも、ショウの真意を量れないまま、そのまるでペットが一匹増えたみたいな不思議な同居生活は、私に安心感すらもたらしていた。

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