しばらく、そのミルクカラメルという飲み物の、見た目のなんだか ほっとする感じをじっと見ていたりょうちゃんは、 「いい匂いだよね」 呟きながら、一口、それを口にする。 「どう?」 カウンターに頬杖をつき、おいしそうにそれを飲むりょうちゃんを見て、 私は聞いてみる。 「うん。・・・おいしいです」 そう言った瞬間、ぽろぽろと、りょうちゃんの頬に涙がこぼれた。 見ていたこっちがびっくりした。 思わず息を飲んで見つめてしまった。 「・・・なんでエミコさん、そんな、優しいんですか〜〜」 泣き声で、そんな風に言うから。 自分が優しいとか、そういうことは考えたことがなくって、単に本能のままに 行動した私、非常にあせる。 「あ、ごめん。泣かすつもりじゃなくって・・・ってなんか私、男役? いや、そうじゃないわ。そうじゃなくて。 ・・・何があったの? だいじょうぶなの?」 「男役って」 私の台詞に、泣きながらも、くすくす笑うりょうちゃん。 それを見ていて、ああ、大丈夫かな、と思いながら、私は聞いている。 「いったいどうしたっていうわけよ? そんなに痩せちゃって。 話したくないなら話さなくていいけどさ」 私の台詞に一呼吸置いて、りょうちゃんは涙をぽろぽろこぼしながら、 こう言った。
「うさぎが・・・」 「う、うさぎ?」 突拍子もない台詞に、同時にそう呟く私と直人。 直人はいつの間にかカウンターの中に戻ってきていて、私たちの会話に入るでも なく、という感じで私たちを見ていたのだが。 泣きながら、りょうちゃんはこう言った。 「実家で10年くらい飼ってたうさぎが、一週間前に死んじゃったの・・・」
「そうかー・・・」 「・・・それ、藤井くんには言ったの?」 「ううん」 「なんでー!」 声をそろえる私たちに、りょうちゃんは泣き笑いする。 「だって」 「だって何」 「だって言えないですよ。言ったら泣いちゃうし。 そんなのめちゃめちゃカッコわるい〜〜」 かわいい。この子。かわいすぎる。 なんて、瞬間的に思ってしまったその気持ちは、心の奥に置いといて。 「バカねえ、りょうちゃん」 呆れて、私はこう言った。 「そんなの、嫌われるわけないんじゃん。・・・ねえ、藤井くん?」 なんとタイミングがいいことか、店の奥から仕込みを終えて現れたマスター・ 藤井和広本人の姿を目にして、私は呆れ笑いのままそう言った。
「な、なに泣いてんの?」当たり前だが、大変驚いた顔の藤井くん。 「チ、チーフ!」あせった様子のりょうちゃん。 「飼ってたうさぎが、一週間前に死んじゃったんだって」と、私。 それを聞き、ああ・・・、と藤井くんは、納得した様子をみせる。 「だから元気なかったんだ?」 「あ、あの、ハイ」 涙を隠そうと一生懸命なりょうちゃんはうまく喋れない様子で、私は ちょっとわるいことをしたような気持ちになって思わず黙ってしまう。 しばらく、どうしようかという感じで、微妙な沈黙が流れた。 そしたら。 ふいに、直人がこう言った。
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