『日々の映像』

2010年06月09日(水) 管政権の発足:その期待のの背景は


菅首相:世論好感で「第三極」に打撃
毎日新聞 2010年6月7日
社説:菅新体制―「政治主導」を手始めに
                   2010年6月8日   朝日
社説:菅内閣きょう発足 「脱小沢」で新しい政治を
毎日新聞 2010年6月8日 

菅政権は反小沢路線を取ったことが、管首相の期待63%に表れているようだ。それにしても小沢氏辞任の評価81%もあることに対して、ご本人はどう理解しているのだろう。国民的不人気の前小沢幹事長であってと言える。政治は新しい風が吹き始めている。

新聞の社説も管政権に対する期待感を表明している。毎日新聞が4、5日に実施した緊急世論調査で菅直人首相に「期待する」との回答が63%に上るなど、各種世論調査で新首相がおおむね好意的に評価されている。

もともと「風」が頼りの新党は自民党以上にダメージを受けているようだ。「第三極」として先行するみんなの党は支持率に頭打ち感が漂い、新党改革は「菅民主党」に秋波さえ送り始めた。たちあがれ日本は公認辞退者が出るなど選挙準備が難航し苦悩しているようだ。

朝日新聞の社説の一説を引用したい。

「夏の参院選で菅氏とともに党の顔となる幹事長には、小沢一郎前幹事長から一貫して距離を置いてきた枝野幸男・行政刷新相を起用した。全体として「脱小沢」の色彩が濃い布陣だ」

脱小沢の布陣が人気の根幹になっていることをだれが事前に予測しただろう。政治の一寸先を見分けることは難しい。

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菅首相:世論好感で「第三極」に打撃
毎日新聞 2010年6月7日
 毎日新聞が4、5日に実施した緊急世論調査で菅直人首相に「期待する」との回答が63%に上るなど、各種世論調査で新首相がおおむね好意的に評価されたことで、もともと「風」が頼りの新党は自民党以上にダメージを受けている。「第三極」として先行するみんなの党は支持率に頭打ち感が漂い、新党改革は「菅民主党」に秋波さえ送り始めた。【中田卓二、木下訓明】
 みんなの党の渡辺喜美代表は7日、国会内で記者団に「『みんなの党でないとだめ』という人はまったく微動だにしてない」と強気に語った。だが、同党の支持率は、民主、自民両党に不満を持つ層が押し上げてきた側面は否めない。
 実際、昨年11月以降順調に伸びた同党の支持率は今回8%で、5月調査の9%からわずかに後退。参院選比例代表の投票先としては10%の支持で、前回より4ポイント低下した。第三極を目指す他党と比べると依然高いものの、民主党復調のあおりを受けたのは明らかだ。
 6日投開票された横浜市議泉区補選(改選数1)では、有力視された同党候補が民主党候補に約3500票差で敗れた。選挙中は渡辺氏も応援に入ったが、「首相交代の影響がなかったとは言えない」と認めざるを得なかった。
 たちあがれ日本と新党改革は参院選の公認辞退者が出るなど選挙準備が難航。たちあがれ日本幹部は「今まで通り地道にやっていくしかない」と苦悩をにじませた。対照的に新党改革の舛添要一代表は民主党批判一辺倒を転換し、「政界再編の第一歩を踏む菅内閣にしてほしい。私の最大の戦う相手は小沢一郎(民主党前幹事長)さんだ」と「脱小沢」路線の菅首相にエールを送った。
 一方、自民党を離党し無所属で活動する鳩山邦夫元総務相は7日昼、国民新党の亀井静香代表と東京都内の中華料理店で意見交換した。会合には鳩山氏に近い自民党の河井克行衆院議員も同席。鳩山氏は記者団に「(河井氏には)早く自民党を出ろと言っている。もう時期かもしれませんよ」と思わせぶりに語った。
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社説:菅新体制―「政治主導」を手始めに
                      2010年6月8日   朝日
 菅直人新首相を支える新しい民主党執行部が発足した。
 夏の参院選で菅氏とともに党の顔となる幹事長には、小沢一郎前幹事長から一貫して距離を置いてきた枝野幸男・行政刷新相を起用した。全体として「脱小沢」の色彩が濃い布陣だ。
 政権交代で「新しい政治」を期待した世論が鳩山政権から離れていった大きな理由のひとつが、小沢氏が体現した「古い政治」の体質だった。
 自民党時代と変わらぬ政治資金疑惑、露骨な利益誘導を伴う選挙戦術、異論を許さぬ強権的な党運営。その積み重ねが有権者をひどく幻滅させた。
 菅氏がまず人事で「古い政治」との決別を前面に出したのは正しい。
 鳩山政権の機能不全を反面教師に、菅政権が統治能力と政策実現能力を発揮できるか、その鍵を握るのが新しい「政策決定一元化」の態勢である。
 菅氏は小沢氏が廃止した政策調査会を復活し、そのトップに玄葉光一郎・衆院財務金融委員長を据えた。公務員制度改革、「新しい公共」担当相を兼務させて入閣させる方針だ。
 玄葉氏は早くから政調復活を唱え、参院選のマニフェストづくりにもかかわってきた。財源不足で実現が難しいことが明白になった昨年の衆院選マニフェストを、どう実行可能なものに修正するのか。党と政府の議論をつなぐ玄葉氏の責任は重い。
 本来、閣内の政策調整を担う官房長官や国家戦略相と、政調会長兼担当相との役割分担を、あらかじめ明確にしておくことも必須だ。
 菅内閣はきょう正式に発足し、会期末まで残り1週間の終盤国会に臨む。与党内では、2週間程度の会期延長が有力視されている。
 確かに会期の延長は必要だ。しかしそれは、郵政民営化の方向性を抜本的に見直す重要法案を、参院選対策になるからといって駆け込みで成立させるためであってはならない。
 問題の多い法案はこの際、廃案にして仕切り直す。そのうえで民主党政権の看板である「政治主導」体制の確立を進めるため、国家戦略室を局に格上げしたり、政務三役として政府に入る国会議員の数を増やしたりする法案に絞って成立させる。それが、まずこなすべき新政権の仕事ではないか。
 何より求めたいのは、菅新政権が何を本当に目指すのか、鳩山政権の失敗をどう総括し、どう改めるのか、参院選を前に判断材料を有権者に示すことだ。それには国会論戦、特に党首討論や予算委員会での議論が欠かせない。
 代表就任後の菅氏は発言の慎重さが目立つ。前任者が言葉の軽さで信頼を失ったことを思えば、安全運転したい気持ちはわかる。しかし、菅氏の持ち味は「攻め」だ。論客は論戦を受けて立ってこそ、である。
G20―成長と財政の二兎を追う
 世界経済に暗雲が広がる中、優先させるべきは景気回復か、財政再建か。簡単には答えが出ない難問である。
 韓国・釜山に集まった20カ国・地域(G20)の財務相や中央銀行総裁たちも頭を悩ませたのだろう。共同声明は二兎(にと)を追う書き方になった。持続可能な財政の重要性を強調しつつ、経済成長にも配慮する姿勢だ。
 ギリシャとユーロの危機で欧州連合(EU)などが採った措置については歓迎し、深刻な財政問題を抱える国に対して「健全化のペースを加速させる必要がある」とした。
 世界経済のリスクは、金融危機から財政危機に焦点が移りつつある。
 それには必然性がある。金融危機によって世界は同時不況に陥った。各国が協調して財政出動に踏み切り、景気を上向かせたが、財政は悪化の一途だ。赤字が深刻な国の国債を抱える銀行などの経営不安から、再び金融危機が起きかねない。
 欧州も米国も日本も、財政の悪化がひどい。景気回復の芽を摘むような大幅な増税には踏み切れないが、市場の信認を得て成長を軌道に乗せるためにも、中期的な財政再建の道筋を示すことが喫緊の課題になった。
 世界的な金融危機とそれに続く財政危機。この歴史的経験から学ぶべきもうひとつの教訓は、極端なバブルを繰り返さないよう知恵を絞ることだ。
 つい先ごろまで、経済学者の間では、中央銀行の金融政策はバブル生成を防げず、バブル崩壊後にすばやく金融緩和するなどして処理をすればよい、という考えが主流だった。しかし、それは次々とバブルを生み出す結果につながってきた。
 米国のITバブル、住宅バブル崩壊に続き、欧州でも一部の国の住宅バブル崩壊が経済への打撃となった。新興国のバブルも懸念されている。バブルが崩壊すると、財政出動も切り札にはならず、悪影響は長引く。主流派の考えに疑問符がつくのは当然だ。
 金融・財政政策は、その国の状況に応じて行うのが基本である。しかし、規模の大きな国や地域が低金利を長く維持すると、国際的な資本移動を通じて他国のバブルを生み、結局は、自国もしっぺ返しを受ける。
 金融政策だけではバブルを防ぐことが難しいが、各国の規制や監督も組みあわせ、バブルを小さくしなければならない。だから金融政策や監督体制は、世界的な視点と協調が重要だ。
 そのためにもG20などの会議の場で、財務相や中央銀行総裁たちが率直に意見を交わし、認識を共有する努力が欠かせない。
 日本にはこの点、大きな疑問符がつく。1年間で首相が3人目、財務相が4人目。異常さを今度こそ克服しなくては、世界の信頼を失う。
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社説:菅内閣きょう発足 「脱小沢」で新しい政治を
毎日新聞 2010年6月8日 2時30分

 今度こそは期待を裏切らないでほしい。菅新内閣が8日発足するが、多くの国民の気持ちはそんなところにあるのではなかろうか。
 人事には幹と枝があるという。ほぼ出そろった閣僚、党役員の顔触れを見ると、二つの大きな幹がある。第一に、小沢一郎前幹事長の影響力排除、すなわち「脱小沢」の徹底を図った。枝野幸男前行政刷新担当相を幹事長に、仙谷由人前国家戦略担当相を官房長官に起用したことに端的に表れている。
 ◇枝野幹事長の衝撃
 幹事長は国会対策、選挙の全権を握り、官房長官は内閣の政策調整、スポークスマン役として、政権の両輪となるポストである。その政権の命運を握る要の座に反小沢色の最も強い2人を充てた。反小沢「七奉行」と呼ばれる次世代政治家が政府、党の要職にすべて納まったことも、菅直人首相が「脱小沢」に明確なかじを切った証しだろう。
 鳩山由紀夫前首相が刺し違えで小沢氏をもダブル退陣に持ち込んだ意図を考えてみれば、次を引き継ぐものとして当然の措置だろう。何よりも、小沢氏を党のトップに抱いた構図は、袋小路化した「政治とカネ」、党と内閣の権力二重構造、選挙至上主義的な政策的行き詰まりなど、このまま継続するには相当な無理がきていた。この際、重しのようにのしかかっていた小沢カラーを一掃して、透明性と熟議を売りにする本来の民主党らしい布陣で新しい政治を展開すべきである。
 特徴の第二は、党政調会の復活と政調会長の国務大臣兼務だ。政治は生き物である。マニフェストで信任を受けた政策を実施するのは当然だが、それだけでは政治家は要らない。常にマニフェストを進化させつつ、選挙後に発生する予期せざる諸課題に政府与党がどう政策を煮詰め、機動的かつ柔軟、一体的に実行できるのかが真の政治力だ。現在の財政危機、安全保障問題はまさに選挙後に一段と顕在化したものである。
 もちろん、発足前の鳩山政権にこの問題意識はあった。党の政調部会が政策を事前承認しなければ政府の身動きが取れなかった自民党政権時代の悪習を改め、党政調会長に閣僚を兼務させ常に政府与党が一体的に政策決定する、という仕組みを導入しようとして、これまた小沢氏にけられた経緯があった。
 今回は、玄葉光一郎衆院財務金融委員長が党政調会長と公務員制度改革担当の国務大臣を兼務する。最も国民に近い立場にある国会議員たちが時代の変化を敏感に感じ取り、それぞれの問題意識をボトムアップで政策に高め上げていく過程を期待したい。陳情の一元化や公共事業個所付け、道路問題で見られた旧来型「政官業癒着」の政治手法ともおさらばするチャンスでもある。
 人事の枝ぶりはどうか。ざっとみて顔触れが若い。固まった閣僚では最も若い蓮舫行政刷新担当相(42)ら40代が4人、野田佳彦財務相(53)ら50代が4人。党も枝野幹事長(46)、玄葉政調会長(同)となる。英国など国際標準からすればまだまだだが、世代交代が進んだともいえる。また、輿石東参院議員会長ら参院全役員を留任させ、小沢氏の補佐役だった細野豪志前副幹事長を幹事長代理に昇格させたのは、リアリズム政治を掲げる菅首相らしい采配(さいはい)だ。
 さて、問題はこの「脱小沢」シフトで何をなすか、である。
 ◇「カネ」のけじめつけよ
 まず指摘すべきは、「政治とカネ」のけじめであろう。小沢氏は最低でも政治倫理審査会で自らの問題について釈明すべきだ。昨年の政権交代以降、この問題でどれだけ国政の円滑な遂行が妨げられたのか。進んで出席し、チルドレンたちに大政治家の懐の深さを見せてほしい。鳩山前首相も「とことんクリーンに」と言うからには、国会のしかるべき場でけじめをつけたらいかがか。代表選に立候補した樽床伸二・新国対委員長の腕の見せどころになる。問題の根底にある企業・団体献金の禁止に踏み込む好機にもなろう。
 実現すべき理念、政策の再整理、見直しも必要となる。衆院選のマニフェストにうたったもののうち、何を優先的に実現し、何を先送りし、何を取りやめるのか。そして、何を新しく付け加えるのか。菅首相が打ち出した「強い経済、強い財政、強い社会保障」は、どのような政策体系として結実するのか。やるべきことはあまりにも多く時間は少ない。陣容を固めた以上は、この終盤国会の閉じ方をはじめとした参院選までの工程表を速やかに決め、わかりやすい政治を心がけてほしい。
 毎日新聞の緊急世論調査(4、5日実施)によると、菅首相に「期待する」との回答は63%で、「期待しない」の37%を大きく上回った。国民は民主党政権に2度目のチャンスを与えるかどうか、菅政権の一挙手一投足を注視している。忘れてはならないのは政権の政策実行力である。鳩山政権にはこれが欠けていた。政治主導といいながらなぜ官僚を使い切れなかったのか。連立を組んだ小党になぜ振り回され続けたのか。二つの太い幹をどう生かすのか。選挙目当ての半端なお飾りでは、たやすく見抜かれるだろう。
毎日新聞 2010年6月8日 2時30分

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石田ふたみ