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2005年01月28日(金)
漆原友紀『フィラメント』

昨年発売された本。漆原さんが志摩冬青(しまそよご)名義で発表した作品に最近作を二編加えた短編集。『蟲師』の原点ともいうべき『虫師』も収録されている。
10年前の作品は、現在の蟲師につながるイメージを含んでいるけれど、作風はかなり違っている。もし彼女が蟲師を描かなかったら描いたかもしれない、違うイメージも見え隠れする。自分の言いたいことをふくらませて読者に伝える技術はつたないけれど、彼女らしい視点や絵の切り取り方は存在している。それはそれで楽しいが、この本の一番最初に載っている最新作、『岬でバスを降りた人』と『迷宮猫』があまりに素晴らしいので、漆原さんが現在の作品を描いていることを祝福せずにはいられないのだった。一こま一こまの絵が、漆原さんの個人的な体験から生まれているのに、それは私の体験と重なる。おそらく多くの人たちの記憶の底に触れる何かがある。そんな作品を読めるのは幸せだと思う。