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漫画関連ファイル


2005年01月27日(木)
THE・少女マンガ!『エロイカより愛をこめて』

少女まんがをテーマにしたテレビ番組を見ると妙に気恥ずかしいのは何故だろう。エロイカの場合、初期作品が映ると、「うわー」と言ってしまいそうな自分。いろいろと貴重な映像(水野さんとかお姉さま方とか編集のWさんとか・・・)が拝見できて面白かった反面、もの足りなさもあった。マンガの中にいろんなネタが仕込んであるのは、イブの息子達からだし、高尚な芸術作品だけじゃなくて、「ゆかいなロンドン楽しいロンドン」だってあるし、和洋中なんでもござれというのは言わないのかなあ、とか。NATO軍の広報誌に載ったことやエーベルバッハ市から表彰されたことは瑣末なことなんだよ、とか。ネタを『ウフ』のエッセイから取ってるんじゃないよ、とか、いろいろ突っ込みつつ、じゃあ、どうしてあんなにエロイカに夢中になってたんだろうと、しばし考える。
講談社の専属の頃の青池さんの作品が苦手だった。少女まんがを描いていても、妙な違和感があったからだと思う。後年、青池さんのインタビュー記事などを読んで、彼女が自分に合わないものを無理に描いていたからだと知った。セブンティーン誌に連載されていた『七つの海七つの空』から『エルアルコン』にかけて『イブの息子たち』の途中から、青池さんがどんどん変わって行くのをリアルタイムで見た。卵の殻を割っていくように、それまで青池さんがこうあるべきだと思い込んでいたものから自分の描きたいものにシフトしていく様子が読者にも伝わってきた。(このへんは番組でも触れていた)目的のためには手段を選ばないティリアンの性格。今まで少女まんがになかった骨格のしっかりした身体の描写。国際情勢やスパイの話。それは青池作品だけの変化ではなくて、少女まんが自体が大きく変わって行く流れと同調していた。青池さんの作品の主人公達は少年愛全盛の時代にも、青年〜中年ってカッコいいんだよ、と見せ付けていた。(それが、現在のBLにもつながってると思うのはうがちすぎかしら?)
恋愛なんかに目もくれず仕事や任務や野望や趣味に走っている男達がとても魅力的に描かれていた。でもそれだけだったら、あんなに夢中にならなかっただろう。やっぱり伯爵と少佐の関係が重要だったと私は思う。伯爵は自分の趣味に生き、少佐は任務至上主義。このふたりが自分らしく行動した上で、心を通じるような瞬間が時々ある。(少佐は認めないだろうけれど)そこが好きだった。今だったら、簡単にコトに及んでしまうBL作品が多いけれど、エロイカではそんなことは起こらない。でも、「おれも浮上するぞ、伯爵」のひとことだけで十分なのだ。ベルリンの壁崩壊後、再開されたエロイカはとても良く出来た作品だけれど、昔のようなときめきは感じない。スラップスティックコメディのようにぐるぐるしたり、スパイ小説もどきのようにネタが仕込まれても、どきどきしないから。少佐と伯爵の関係はもう一歩も動かない。理想的なエロイカのラストは、私の頭の中では、少佐と伯爵の生死をかけた一騎打ちであるべきなのだ。・・・・えーと、番組の感想から大きく逸脱したまま終わり。