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漫画関連ファイル


2004年05月01日(土)
第二夜「デザイナー」

いや、おもしろかったですね。第一夜のちょっと物足りなかった部分をふきとばしてくれるような中身の濃さ。これは本当に三夜連続で三部構成になった番組なのかも。少女まんがの核に向かってだんだん間合いをつめていく感じがします。
一条御大はマンガが好きだ。マンガ家になってよかった、と言います。これだけ長くマンガを描いて、今なおそう言えるところが素晴らしい。現在連載中の『プライド』と30年前の『デザイナー』がつながっている面白さ。この番組はたぶん、こういう構成になるだろうなあという予想はしていました。本のタイトルは忘れましたが、最近出た一条さんの本に、家のことや貧乏したことや絵を勉強したことやデザイナーさんにいろいろ教えてもらったことを書いたものがあったから。語り下ろしみたいな本ですが、「プライド」を持って生きることを信条として生きていく、という一条さんの姿勢がはっきり現れていて面白かった。この番組でご本人自身の口から、語られるのを聞いてほんとにパワフルな人なんだなあと再確認しました。

『デザイナー』という作品を読んだことのない、うちの子供たちが見ても、この番組はおもしろかったそうです。なぜなら『プライド』を読んで、一条さんがどういう人かわかっているから。『デザイナー』って面白いの?と聞くので、今度実家から持ってきて見せてやると約束しました。

70年代から80年代の少女マンガの黄金期にどっぷりひたってきた人間にとっては、『ベルばら』『デザイナー』『ポーの一族』というラインナップは、ちょっと不思議でした。『デザイナー』というのは、先端の技術で描かれたマンガだったけれど、マニア的には「柾」が大矢ちきだよね、というのがまず言いたくなる(笑)とか、内田善美がアシスタントしてたんだよね、とかいう話になって、作者本人について熱く語るということはあまりなかった気がします。そのあとの大長編『砂の城』とか『有閑倶楽部』については、流して描いてるんじゃないかしら、くらいに私は見ておりました。

でも、今という場所から振り返ったときに、30年以上描き続けて、第一線で活躍されて、次の世代の読者(たとえばうちの子供たち)をひきつける力があるということは、すごいことなんじゃないか、と思いました。一条さんの作品は、とてもおしゃれなんだけれど、手が届かないほど洗練されてしまうことはない。一般の読者からかけ離れてしまうことはない。変わらずその位置をキープし続けることはすごく難しいと思うんですが。

少女まんがの黄金期みたいな時期があって、そのあと細分化されたり再生産になってしまったりマニアックになったり、同人方面へ行ってしまったり、拡散したかのように見えたんだけれど、ここにきて一条さんが「マンガ家になってよかった」と言いつつばりばり仕事をしていたり、山岸さんが『テレプシコーラ』で「いまどき正しい少女まんが」(byいしかわじゅん)を描いていたりすることは、すごいかもしれません。本来のマンガの面白さを再発見させてもらっています。

そして、第三夜が楽しみですね。この流れで『ポーの一族』についてどう語ってくれるのか。
野心とも勝ち負けともプライドとも無縁のところに、存在してる作品だと思うんですが。
でも、そいういろいろなものが同時に存在しているのが少女まんがなんですよね。