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2002年01月23日(水)
サラ・イイネス『大阪豆ごはん』

私は少年誌や青年誌をまったく読まないので、ネットのお友達に貸してもらわなければ
一生読むことはなかっただろう。『大阪豆ごはん』
とてもおもしろく読めました。
コマの形が変わらない、1ページに6コマで、右→左、上→下の順番に進む。
セリフもキャプションも全部手書き文字。絵は、シンプルで、細くなくて、暖かい感じ。

大阪の街中にある古い日本家屋(料亭のような数寄屋造り)に住む家族の話。
ばりばり仕事をする両親は手間のかかる家を出て、マンションに住み、
家には、長女とそのダンナ、次女、三女、末っ子の長男とネコ一匹が住む。
長女は専業主婦で、働き者。てきぱき家事をこなして、お料理も上手。
ダンナは、北陸生まれの建築士。若いのに建設会社でよいポストについている。
次女はファッションディスプレーの仕事をしている。立体造形の才能があって、
気に入った服を自分で作ってしまう。
三女はモータースポーツ関係のお仕事。
末っ子の長男は、芸大でバイオリンを学ぶが、どこから見ても「お気楽」でぼーっとしている。
しかし料理は上手でイカゲソが好物。

この家族をとりまく仲間もみんな個性的。
大金持ちで美術商を営む大清水さんとか、ドイツ人の母と大阪人の父とのハーフの大橋さんとか
どこから見てもあやしい社長さんとか、女に手の早いのとか、オタクな新入社員とか。
身長二メートルのオカマのおねーさん(?)とかとか。

これらの人々がすべて大阪弁を話すところがポイント。
こうやって書き出してみると、意外におしゃれで、トレンディー(死語)な要素満載なんだが
大阪弁は全てを破壊する。いや、無力化する。ひっくり返して違ったものにしてしまう。
彼らは、ロンドンでも、ニューヨークでも、長崎でも、この風景には似合わんなといいながら
大阪弁を話す。買物の時には値切り倒す。どこへ行ってもマイペース。
大阪の中のゴージャス。同じ日本でも違う世界のようだ。

読んでいるうちに、登場人物が実在しているみたいに思えてくる。
大阪の街にはああいうお家があって、わいわい言いながら暮らしているのかもしれないと。
たくさん人が入ると床が抜けてしまうくらい古く、夏は暑くて冬は寒いこの家で
ネコと一緒に涼しい風が通る場所を捜して、所かまわず昼寝をするのは
さぞ楽しいことだろうと。

サラ良イネス_index
http://www2.plala.or.jp/spring/saara/index.html