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漫画関連ファイル


2002年01月24日(木)
幸村誠『プラネテス』

このごろネットのお友達に貸していただいた漫画を読んでいます。
いやいや、いろんな世界があるものだと感心してしまう。
自分のなじんだテリトリーで満足していてはいけないなあと思います。

『プラネテス』
これがデビュー作とは思えないほど、絵も話も洗練されている。
第一話のエピソードで、センチメンタルな話に流れてしまうのか?という一抹の不安は
そのあときれいに払拭されてしまった。
宇宙空間へ入りやすくするための、よく考えられた導入だったのかもしれない。

21世紀後半、宇宙へ出ることがそんなに特別ではなくなった時代、
宇宙にただよう衛星の破片を回収する仕事をする男の子ハチマキ(八郎太)と彼をとりまく人々の話。
最初は、宇宙のゴミを拾う人たちの人間模様の話かと思っていたら、
やがて有人木星往還船の乗組員をハチマキが目指すという方向に進んでいった。
心の中に様々な葛藤を抱え、行きつ戻りつしながらハチマキは進む。
まだ、ストーリーが完結していないので、ちゃんとした感想は書けないが、
ハチマキの物語を通して作者が描きたいものは、宇宙への思いかもしれないと思う。
未知なるもの、遥かなるものを目差していきたいという気持ちと表裏一体の恐怖。
空に飛んでいってしまう愛する人を見送る家族や恋人の気持ち。
目的を遂げるためには、多少の犠牲は仕方がないと考える科学者。
未知へのあこがれのそばには、国家の利権もからむ。
物語は、一方向に突っ走ることなく、様々な視点を用意する。
それでも、隠しようもないのは、宇宙へのあこがれだ。
それがストレートに伝わり、冷笑的なところがないので、作品全体が初々しい。

カラーページがとてもきれい。エアブラシかカラーインクで
ブルーを基調に淡い色彩で彩色されている。グラデーションのトーンを使った宇宙空間。
きちんと描きこまれたメカ。それでも冷たさを感じないのは、人物の表情が暖かいからだろう。
残念ながら私は、熱くて寒くて空気のない危険な宇宙空間へ行きたい
というDNAを持っていないので、地表に張り付いて生きるしかないが、
この本を読むことによって、違う生き方の人たちの視点をしばし共有できて楽しかった。

第一話は講談社のサイトで見ることができます。ファンサイトも多数あり。

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