今市子さんの最新作の読みきり。本屋で立ち読みしたんだけれど、 何となく気になって結局買ってしまいました。 徳間書店の隔月刊の「Charaキャラ」という雑誌に載っています。(2002年2月号) 単行本に収録されるのはいつになるかわからないので ファンの方は是非読んでみてください。
限りなく昭和初期に近いある時代、鶴亀味噌の若旦那升一郎と、 吉原のお茶屋の幇間(たいこもち)与三郎の話。 鶴亀味噌の主人である升一郎の父親の葬式から話は始まります。 跡を継ぐのはずの升一郎が今ひとつ乗り気でなく、 周囲もあやぶんでいるところに、次々起こる怪現象。 犯人は誰か?与三郎は何を知っているのか? 幻月楼の幻の月とは何なのか?
升一郎のキャラがおもしろい。 今さんの作品にめずらしく、ちゃんとした(?)美形で頭もいい、 何でもできるのに何もものにならない、器用貧乏の素っ頓狂。 キーワードは素っ頓狂です。いちいち、タイミングがはずれているところが絶妙です。 与三郎も、幇間でふらふらしているように見えて、 実は腕に覚えがあったりする。そして、「見える」タイプ。 得意技は「怪談」です。 このふたりがからんで面白くないわけがない。 掲載誌はボーイズ雑誌なのかな? ちゃんと読者サービスもありますが、ほどよく上品で 楽しい仕上がりになっています。
シリーズにできそうな作品なので、きっと探偵物みたいにして 続くんじゃないかしらん。 でも、探偵物とも幽霊話ともコメディとも、ひとつにジャンルわけ できるような作品ではなくて、いろんな要素がバランスよく混ざっている。 この作品で一番注目したいのはそこだと思いました。 今までの他の作品もおもしろいけれど、それらを混ぜて もっとおもしろくなった感じ。 絵もお話もひとつ垢抜けたような気がする。 ますますこれからが楽しみなのでした。
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