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漫画関連ファイル


2001年12月28日(金)
山岸凉子『舞姫』テレプシコーラ第2巻

山岸さんの会心の作品。
まだ2巻が出たばかりで、この先の展開は読めないけれど
本を手にして幸せ。読んでいて幸せ。続きを待つことができる幸せ。
そんなものがつまっている本だと思いました。

すみずみまでゆるぎがないので、
どんなに空美の悲惨な状況が描かれても、それは猟奇に走らない。
きっとストーリーの中で必要だからこう描かれているんだろうと納得できる。
空美の話に溺れていくことはないだろうし、仕方がないと放置することもないだろう。
かといって安易な救いの手もやってこないだろうけど。
千花の恵まれた環境が本人にとって、全てを約束するわけでもない。
六花も自分の居場所を自分で捜していくだろう。
三人の行く先を、私はわくわくして追っている。

考えてみたら、三人の名前はそれぞれ意味があるんだろうね。
千の花。六の花。でも、数は少なくても花は花。
きっときれいな花を咲かせてくれるんじゃないかな?
空美という名前が、すごい。色即是空 空即是色?

一巻に引き続き、二巻の装丁も美しい。
本を作ることを、作り手が楽しんでることを感じさせる。
そういう本を手にした時は読者も楽しい。

さらに、今回は、おまけのまんがと対談がついて、
バレエをもっと広めようという密かな意図まで感じさせています。
漫画だけでなくて、実際に体を動かしてごらん。
それもとっても楽しいよ・・・と。

追記
再読して気がついたこと。
対談では、連載の32ページを描くのにまるまる1ヵ月かかると山岸さんは話されている。
重心がずれているのを直したりするのに時間がかかると。
レオタードの絵を描くということは、漫画の絵を描くことの基本を
くりかえしてることになるんじゃないかしら。
ベテランの方々の絵が長年の慣れで、どうみてもゆがんでいるということが
時々あるのだけれど、山岸さんがバレエ漫画に戻ることによって
漫画を描くことも基本に戻って鍛えているような。
こんなに実績を積んでいるのになお!・・・というところが素晴らしい。

SOKEの漫画関連ファイル
2001年06月27日(水) 山岸凉子『舞姫テレプシコーラ 1』
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22725&pg=20010627