不思議な作品。ものすごく若いところと、ものすごくこなれたところと、 まじめなところと、いいかげんなところが混ざり合っている。 やっぱり家の中の暗がりや、庭のしげみの影に何かいるような気がする。 すりガラスから入る光まで描くことができるのは今市子さんの独壇場。 最初の作品から最後にいたるまでに長い時間がかかっているそうで、 描きたい物があふれているけど未熟な最初の頃と、 こなれてきているけど、最初の熱意をもてあましているかのようなラストと どちらが好きかは意見が分かれるところかもしれない。 他の先生の影響があらわれている初期の作品を読むと 読者としては、二度楽しい。あれを思い出し、これを思い出し、 共有されているものと、違っているものをいろいろ考える。 十分、商業出版でいける作品だと思うんだけど、刊行は難しいかしら。 せめて同人誌で再版されることを切に願うのでした。
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