昭和21年の北海道で戦災孤児の少女が、 不思議な力を持った男に拾われ育てられる。 その男の名前を白眼子という・・・
フィクションと但し書きがついているけれど、実話っぽいつくり。 本当の話なのかどうかは知らない。 山岸さんの作品の主人公はこのごろ、美男美女ではなく 平凡な容姿の目立たない女の子が多い。 平凡な人間がいろいろな出来事、運命の中で 悩んだり苦しんだりしながら、生きていく姿を 少し離れたところから描いているような感じ。 (平凡な人間だからといって平凡な人生というわけではない)
客観的ではあるけれど暖かい。 甘くならない程度のやさしさを感じる。 それを読んでほっとする。 白眼子と主人公光子の交流は さりげないものだけれども、こんなに しみじみと心に染みるのは何故かしら。
その暖かさの部分は創作であると思う。 ストーリーを組み立てて最後にどこに着地するかは 作者の気持ちしだいだと思う。 悲劇にすることも、教訓を引き出すこともできる。 何らかの告発や警告にもっていくこともできる。
山岸さんの作品は穏やかなごくごくまっとうな結末に着地することが 多くなってきたと思う。 宗教に走らず、この状態に着地するには、 バランス感覚と理性と意志の力が必要かもしれない。 山岸さんに限らず萩尾さんも大島さんも ほれぼれするようなコントロールを見せてくれる。 彼女達の作品をリアルタイムに読めることを感謝しつつ 読者はため息をつくばかりです。 (物語としてみた時は別の問題があるかもしれないけれど)
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