『洗礼』が連載されたのは、週刊少女コミック。 『トーマの心臓』や『ファラオの墓』と同時期ではなかったかしら。 あの頃の週コミは不思議な世界だったね。今にして思えば。 断片的に『洗礼』を読んで、こわいとは思ったけど、ほかに気をとられていたので あまり深くは考えなかった。 今回一気に全編読んでみて、これは少女まんがにおさまりきらない いろんなものを含んでいると思った。
お話は、永遠の美女といわれた女優が、自分の老いから逃れるために 子供を産み育てて、大きくなったところで脳移植をして入れ替わろうという話。 入れ替わったあとの少女が、大人の女のように嫉妬に身悶えしたり 担任の教師に迫ったり、正体を探ろうとするクラスメートを陥れたりするのが あまりにリアルで、こわい。
母と娘の関係の言うに言われぬ言葉にできないドロドロを こんなに見事に描く人はいない。そして、主人公の少女さくらは本当にかわいい。 昔、このかわいさはよくわからなかったと思う。 こわい顔を描くのと同じくらい、きれいな顔を描くことが、楳図さんはうまい。 担任の教師が意外とちゃんとした大人で、お友達の良子ちゃんが ひどい目にあいながらも、さくらを救ってくれるところがすごい。 ラストをどうとらえるか意見が分かれるところだけれど、 逃げたようにも思えない、本当にプロの作品なんだ、、、、 もっとほかの作品も読んでみようと思いました。
私の買ったのは小学館文庫版なんだけれど、第1巻の解説がひどかった。 絶対読んじゃだめ。せっかくの作品のネタをばらすなんてあきれ果てました。 (第2巻解説もだめだわ。注意はしてるけど) 読者の楽しみを奪うような解説しか書けないのかしら 載せる編集も編集だ。
|