風と木の詩の連載が終了してからもう、何年だっけ?(16年!) フラワーコミックスで全部初版で買って、もうずいぶん長いこと読んでいない。 それが、このあいだ、番外編があると聞いて、白泉社文庫版第10巻を買ってきました。 (このごろ、文庫や全集に思いがけず未収録作品が載っていたりする)
「幸福の鳩」初出は1991年イラスト集「海の天使」(角川書店) ジルベールが死んでから3年、セルジュのピアノの演奏会で再会した ジュールとロスマリネの話。 さりげなく登場人物たちのその後にふれながら、すっかり「大人」になってしまった ふたりのおだやかな会話に、ほっとさせられる作品でした。 読者は(私は)、彼らと同じ思い出を共有しているのですね。 彼らが過去を語るとき、読者も昔の記憶を呼び覚ます。 これも長い物語を読む醍醐味かもしれません。 そして、あの結末ももしかしたら、幸福な結末かもしれない、と納得したりします。
漫画はその思い出が、作品としてリアルタイムのまま残っているので、 読み返せばその時に戻ることができます。 番外編を読んでから、文庫の10巻の最初のページから読み返しました。 プチフラワーに連載されていた、1番悲惨な部分。ジルベールが薬を始めて セルジュが生活を支えきれなくなって、終末へ一気に行くところです。
驚いたのは、初出の時嫌でたまらなかった、あの話がすんなりと読めたこと。 ボナールの家でのつかの間の休息が、(それが永続しないとわかっているからこそ) とても美しい時間だとよくわかりました。 そして、ジルベールが死んで嘆くセルジュの気持ちの描写が心地よかった、、、 竹宮さんの初期の作品に見られた、きらきらした感じが全開でした。 その時が1番美しいから、そのまま閉じ込めてしまう、作者と読者のわがままも 今ならわかります。共犯者。 最初から読んでみようかな。
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