TOP 最新の記事 戻る≪ I NDEX ≫進む


漫画関連ファイル


2000年03月02日(木)
「風と木の詩」番外編

風と木の詩の連載が終了してからもう、何年だっけ?(16年!)
フラワーコミックスで全部初版で買って、もうずいぶん長いこと読んでいない。
それが、このあいだ、番外編があると聞いて、白泉社文庫版第10巻を買ってきました。
(このごろ、文庫や全集に思いがけず未収録作品が載っていたりする)

「幸福の鳩」初出は1991年イラスト集「海の天使」(角川書店)
ジルベールが死んでから3年、セルジュのピアノの演奏会で再会した
ジュールとロスマリネの話。
さりげなく登場人物たちのその後にふれながら、すっかり「大人」になってしまった
ふたりのおだやかな会話に、ほっとさせられる作品でした。
読者は(私は)、彼らと同じ思い出を共有しているのですね。
彼らが過去を語るとき、読者も昔の記憶を呼び覚ます。
これも長い物語を読む醍醐味かもしれません。
そして、あの結末ももしかしたら、幸福な結末かもしれない、と納得したりします。

漫画はその思い出が、作品としてリアルタイムのまま残っているので、
読み返せばその時に戻ることができます。
番外編を読んでから、文庫の10巻の最初のページから読み返しました。
プチフラワーに連載されていた、1番悲惨な部分。ジルベールが薬を始めて
セルジュが生活を支えきれなくなって、終末へ一気に行くところです。

驚いたのは、初出の時嫌でたまらなかった、あの話がすんなりと読めたこと。
ボナールの家でのつかの間の休息が、(それが永続しないとわかっているからこそ)
とても美しい時間だとよくわかりました。
そして、ジルベールが死んで嘆くセルジュの気持ちの描写が心地よかった、、、
竹宮さんの初期の作品に見られた、きらきらした感じが全開でした。
その時が1番美しいから、そのまま閉じ込めてしまう、作者と読者のわがままも
今ならわかります。共犯者。
最初から読んでみようかな。