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2000年02月17日(木)
「銀の三角」 by 萩尾望都

今日は朝から、降りしきる雪を窓越しに眺め、雪かきもせず(あ〜車が出せない!)
「銀の三角」を読んでいました。
時空を自由自在に行き来して破綻しない、構成力というか、力技に久しぶりに酔いました。
で、これはややこしいまま、味わうのが一番なんだけど、
ヒマにまかせて、分析を始めてしまいました。(無粋な!)
あらあらまとめただけですが、書いてみます。

1.WHEN(いつ)
これが一番ややこしい。主な時間的舞台は4つあります。
まず、マーリー(中央政府の暗殺者)の生活している、「中央現在時」
ル・パントー(赤砂地の王の息子)が最後に殺される「中央現在時より15年後」
ミューパントー(最後の銀の三角種)が、いる「中央現在時から3万年前」
エロキュス(歌い手)が生まれたチグリス・ユーフラテスの川辺の「中央現在時から7000年前」
おまけ、ラグトーリンが浮遊している亜空間

2.WHERE(どこで)
マーリーの属する中央第一区青耳太陽系第五惑星
ル・パントーが生まれた辺境の惑星、赤砂地の王国
ミューパントー(ディディン)が交配を待つ三万年前のプロメ、そして帆星Xのノヴァを迎える惑星
地球のチグリスとユーフラテスの川辺
おまけ、ラグトーリンが浮遊している亜空間

3.WHO(誰が)
マーリー1(エロキュスを暗殺する。ラグトーリンに殺される。)
マーリー2(クローンの記憶注入の際に、マーリー1とエロキュスの記憶が入ってしまった半陰陽)
マーリー3(マーリー1の死後一年後に再生されたクローン。3万年前のプロメで最後の銀の三角人に会う)
ル・パントー(赤砂地の王の息子。遠く銀の三角人の血を引いているせいか時空を移動することができる。
        忌むものとして、父王に何度も殺されるが再生する。実体は幽閉されているが、夢は様々な
        時空に出現する)
ミュー・パントー(3万年前のプロメにいた、最後の銀の三角人。)
ラグトーリン(全てをあやつる謎の少女)

4.WHAT(何をどうした)
マーリー1は中央政府の暗殺者として、危険分子と感じた歌手エロキュスを暗殺する。
しかし、エロキュスは、謎の少女ラグトーリンが時空のゆがみを直すために7000年前の地球から
転生させた歌手なので、ラグトーリンはマーリー1を殺し、クローン再生されたマーリー2にエロキュスの
記憶を注入し、エロキュスを再生する。
マーリー2(エロキュス)は、赤砂地へ行き、ラグトーリンの思惑のままル・パントーに寄り添って暮らす。
完全なマーリーとして再生されたマーリー3は、マーリー2(エロキュス)を再び殺そうとする。

5.WHY(なぜ)
ル・パントーが最後に殺される時に発する叫び声は、時空を破壊してしまう。
ラグトーリンは、どうにかして、ル・パントーの叫びを取り除きたく思っている。
そのため、チグリス・ユーフラテスの川辺からエロキュスを中央現在時に転生させ
彼女の望郷の気持ちをこめた歌のエネルギーを利用しようとする。
ところが、中央政府の暗殺者マーリーは、エロキュスに社会の安定を覆す力を感じ、
これを抹殺しようとする。
ラグトーリンは、マーリーさえも、ひとつの駒として動かして、やがて思わぬ結末がやってくる。

赤砂地の高原の影日の祭りと、15年目のル・パントーの最後の叫びと
3万年前の帆星Xのノヴァとミューパントーの死と
マーリーによるエロキュスの殺害が同時におこり、
時空の壁が裂けて、銀の三角人のいのりの朝のうたが鳴り響く。

結び目はほどけて、なくなってしまった。
だけど夢は残った。そして、夢を思って歌う歌い手はいつまでも存在する。

本当は何もない。だけれども、ふとした拍子に現実の隙間に夢が生まれる。
それは、誰かの頭の中かもしれない。その夢を見た者は、歌をうたう。
歌いつづけるエロキュスは、萩尾望都をほうふつとさせる。
それを追いかけるマーリーは読者かもしれない。

「もうすぐ宙港です」のセリフは何回でてくるでしょう?

この逃亡シーンから、物語の時間軸は大きく揺れ始めて過去と現在と未来が
交互に現われて、読者はいいように翻弄される。これが醍醐味ですね。
だから、

6.HOW(どのように?)は、

読んでみてのお楽しみ!