「ポーの一族」の単行本は、3巻まで毎月1冊づつ発売された。(1974年) 広告を見て、私は町の一番大きな本屋さんに買いに行った。 「うつのみや」というお店で、当時、金沢の繁華街の真中にあった。 家から30分歩いて行った。 (中学生の頃はバス代やお昼のパン代を倹約して本を買っていた)
売っていなかった。お店の人に聞くという知恵がなかったので、 あきらめて帰った。発売されなかったのかも、、、と考えた。
翌月、また行ってみた。今度はあった。それも1巻と2巻。 喜んで買って帰って、1巻が初版でなかったので、奈落の底に落ちた。
「アラベスク第一部」も、「恋しちゃおうかナ?」も、「お出会いあそばせ」も 「フリージアの恋」もみんな初版で買ったのに。ううう。
でもそんな思いは、その2冊を読んで吹き飛んだ。
何だろうこれは。 もう一回読み返した。 何だろうこれは。 何回も読み返した。 何回も何回も何回も読み返した。 そのたび、「ポーの一族」の世界にどっぷり浸って 飽きることが無かった。 コマのすみずみまでを見て、セリフのひとつひとつを暗記して、 コマ割から、何から全部、頭の中に浮かぶのに それでも、また読み返した。 そして、文章とセリフとコマ割りの緩急自在の流れの中に また身をまかせる。
物語の世界に溺れる楽しみを初めて知ったのだった。
(あああ、これってまるでラブレターじゃないの。 いまさらこんなの書くなんて、まだまだ若いなあ。)
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