弱Sonファイブ
部屋はきれいだった。 「引越ししたてで何にもないの。 恥ずかしいよ」 って言う。 加護は少し笑うだけ。 「お茶入れるね」 と言って台所に消える。 加護さんはソファーでくつろぐ。 ... フェンディー、か。 ティッシュケースは アナ・スイ? ... ふーん。 「ごめん、下着とか干しちゃってて。 なんか恥ずかしい」 なんかゴソゴソやってる間、 加護さんはドカッとソファーに腰掛け、 天井をにらんでいた。 「見て、仕事着」 彼女は 丸1畳あるクローゼットを全開にした。 ... ドレスばっかり。 「どう?赤いのとかいい感じでしょ?」 「ミサキさんは赤も似合うね」 「ヒザ丈なんだけど...」 「いくらでも短くはなるんちゃうん?」 「短いのがすきなの?」 「女の足って神様が作った芸術品やん? ミサキさんも足を出すべきや。 あー、パンツ見えそう」 「エッチー」 ... 「てきとうにくつろいでて。 音楽とか聴く?」 と言ってCDのボックスを持ってくる。 ... トランス、トランス、 トランス、トランス、 トランス、ケミストリー? ... 「あ、これ? ケミストリー超スキなんだ。 聴こうか?」 ... お茶を飲みながら ケミストリーを聴く。 それにしても お水のドレスってどこで買うねんやろ? マルイ? は閉まってるよな。 通販? ... ドンキホーテ? ... 「血出てるよ?」 「なんだこりゃ?」 ... 先日切ったところから 血がにじみだして ソファーを赤くしてた。 急いでティッシュで拭く。 すぐに取れた。 ... 「近くにコンビニあるから バンソーコー買いに行く?」 「おう」 と言って部屋を出る。 ドアを開けると ピアスの黒服ふたりと目が合う。 ... おれ、サラリーマン。 ホスト、ちがう。 目で訴える。 しかしなぜかスイッチが入ってしまう。 マンションの外に出る。 肩で風を切って歩いてしまう。 2歩後ろからついてくる。 コンビニに行く。 カゴを持ってくる。 なんでバンソーコーひとつ買うのに カゴ持って来るんだよ ってキレそうになる。 コーヒーとバンソーコーを買う。 「何か買うか?」 って聞く。 「ううん、いい」 って言う。 ... 部屋に戻る。 バンソーコーを貼ってもらう。 「バンソーコーおっきいねー」 って言われる。 カチンとくる。 「お茶いれるね」 って言う。 またお茶かよ!? 「お茶はカテキンが入ってていいのよ、 カテキンが」 って言う。 「ふーん」 とか言いながら マグカップをゆらゆらさせる。 「あ、落とさないでね。 高いから」 「ブランドもん?」 「裏見てよ」 HERMES ... 「ヘルメス」 「ヘルメスって言わなかった?」 「別に。いくらしたの?」 「1脚12000円」 「だよね」 「?」 「裏見て」 「...?」 「値札がはってある」 ウソ。 ... 「着替えてもいい?」 「ええよ」 「のぞかないでね」 「3秒たったらのぞきにいくよ」 「そんな早く着替えらんない」 「じゃあ早く着替えてこい」 ... あー... 眠い。 ... 「ケミストリーのビデオ見ててー」 「ああ」 「聞こえたー?」 「ああ」 「返事してよー」 「ああ」 「加護くぅーん」 「ぁあ゛!?」 「呼んでみただけー」 ... あー、ダリ。 ... 「じゃーん、部屋着〜」 「へー」 「ちょっとB系」 「さっきと雰囲気ちがうやん?」 「若い?」 「若い」 「恥ずかしいから見ないで」 「アホ」 ... 「ケミストリーのビデオ 見ててって言ったじゃーん」 「ああ」 「見かたわかんなかったの?」 「ああ」 「機械に詳しいって言ってたから すぐわかると思ったんだけどな」 「それは仕事の話や」 「...」 「...」 「NKホールのライブだよ」 「...」 「...」 「...」 「電気消すね」 「...」 「おやすみ」 ... 「ねえ?」 「あ?」 「ちょっとだけそっちに行っていい?」 |