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■■ とうとつにしりきれなネタ
ゆるせないことが、増えていく。
自分に対する憤激が、身のうちに積もり積もって咽喉をふさぐ。
さあ、声を上げて語るがいい。愚かしい恥知らず、聖女の号を僭称する罪びとよ。
それすら叶えられぬのであれば、この身など滅びてしまえ。
「聖女の存在は国を富ませる?」 訊ねる言葉に迷いが表れなかったのは、幸運だった。落ち着いて聞こえた質問は、どちらかといえば確認の意図を含んでいるように捉えられるだろう。 壁際に背を押し付けて追い詰められている従者は、はっとして私の目をまっすぐに見上げる。 「聖女の息吹が、傷病を癒す。聖女の血は、争いを招く」 もう、従者には、逃げ場がない。 聖女に祭り上げられた、あの忌まわしい日の私と同様。まだ若く、力強さなどとは縁のない彼の体は、壁と壁にこれ以上の後退を阻まれ、左右を壁についた私の腕に、前方を私の体に囲われている。 目を見ればすぐにわかった。身じろぎすら封じられたように感じて、切羽詰っている。 哀れに思うのは、本当は彼ではなく、彼の状況に投影した過去の私だ。 だから、手を引いてはならない。 「この体は、すでに血を流した。この国を統べる者の手によって流された聖女の血が、今のこの愚かな争いを招いた。……間違いないね?」 今このとき、何よりも哀れみ、案じなければならない者たちは、この部屋の外にいるのだから。この古ぼけた砦の外で、農具や粗末な棒切れを手に、互いに傷つけ合っているのだから。 「答えないならこの場で死ぬよ。死ねば平和を齎すんでしょう」 「…………どうして、それを? 誰が、あなたに吹き込んだんです」 「言ってなかったかもしれないけど、あのクソ忌々しい男のお陰で、私は読み書きにも不自由してない。幽閉してくれた先には、腐るほど資料があったからね」
2005年09月13日(火)
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