私季彩々
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2001年11月12日(月) 非常階段

 私のバイト先は小さな会社で、近所には食事に適当な店も少ない。みんなお弁当となるのだけれど、居るのは女性ばかりで私の居場所はあまりない。正直女同士の会話というのは、あまり聞いていて楽しくないし、マンネリに思えるのは傲慢なのだろう。けれど、気がつけば携帯電話でメールを打っている彼女らとの沈黙に付き合えるほど、私は女好きではないようだ。

 リュックには単行本が数冊入っている。大抵そういった本を読むわけだけれど、今日は図書館で借りた寺山修司があった。なんとなく本を持って部屋を出た。
 会社といっても4階建てのペンシルビルで、一人になれる空間などない。そんななか、階段の最上階部分はほとんど人がこないことに気がついた。西に窓が開いた踊り場は、随分と冷え切っていたが悪くない。時折女性群の笑い声が聞こえるが、それも遠くに聴こえた。

 そういえば、学部時代には留学生が人気のほとんどない西階段でイスラムの祈りをささげていると聴いたことがある。仕事場といえども、静かな空間というのは利用したいという人がいるものだ。
 ”非常階段”というのは緊急時のためのものだが、重い扉で閉ざされたこの空間は常に開放されている。私は行く先々で時間を持て余した折などはよく覗いてしまうのだが、大抵灯りがついていてほとんど人がいない。無機質な空間を私は結構気に入っている。

 そんななか、女の子が声を低くしながら階段にやってきた。誰もいないと思って携帯で話している。
 この空間の容量は一人が限界というところでしょう。


踊り場で祈る留学生ありき 敷かれし布に西日が残る

冷たさと重さには他の訳がある ”常”と”非”隔てる防火扉

同僚の醒めた笑いも遠くなる非常階段で 歌集を開く

我愛す非常階段の無機質に 携帯で話す女が割り込む Home&Photo


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